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後藤佐恵子:はごろもフーズ社長に就任

2020/04/15

MBAを取り、はごろもフーズへ

──25歳でスタンフォード大学へMBAを取るために留学されたんですね。

後藤 はい。スタンフォードでは企業の多面的な見方を学びました。例えば財務面やオペレーションや人事戦略の面から見ると、トヨタやGMがどう見えるのかということをケーススタディを通して、学びました。

また、アメリカ人の合理的な物事の考え方に触れることができました。日本では前例踏襲など長年やってきたことを続けることに安心感がありますが、アメリカはとてもダイナミックで、朝令暮改も頻繁にある。失敗したと思ったら、簡単に元に戻してしまう。現在赤字でも成長の期待できる企業に資金が供給され、産業が成長していく様子もシリコンバレーで間近で見ることができました。

──日本に帰国されると、大手コンサルタント会社のマッキンゼーで2年間働いた後、いよいよ、2004年にはごろもフーズに入社されます。

後藤 マッキンゼーでは、昼夜問わず働いていたのですが、結婚し、2人の娘を産んで、生活が激変しました。

元々私は目標にまっしぐらなタイプなので、子育てを一生懸命やりました。夫の仕事の都合で、神戸に行くことになり、双方の両親もいない生活でしたので、笑ってしまうような失敗談ばかりで。仕事に復帰してからも、本当に大変でした。

──どういった考え方、モットーで育児と仕事の両立に取り組んでいらっしゃいましたか。

後藤 こんな言い方をしていいかどうか分からないのですが、先ほど申し上げた渡辺さんから就職前に、「女性として両立に悩むことがあっても、仕事をやめないことが大事なのよ」と教えられました。また、どこかで読んだ記事に「100点満点を求めるのではなくて、子育ても仕事も60点でいい。足せば120点だから」と書いてあり、私もそのように考えるようになりました。私も母親としては欠点だらけで、会社でも至らないことばかりと皆に思われていても、そこは負けないで、「私は両方やっているのだから120点」と、自分のことを認めて潰れないようにと、15年ぐらいやってきました。

今、社長になり、一層責任を負う立場になったので、仕事だけで120点を目指したいとは思っていますが、1人だけで会社を運営しているわけではないので、皆のチームワークで140点を目指したいと考えています。

缶詰は環境にやさしい

──では、社長としてのお話を伺います。これからのはごろもフーズのキーワードは「持続可能性」、「環境」、「健康」、「女性」の4点ということですね。まず「持続可能性」についてはどうお考えでしょうか。

後藤 最近、SDGs(持続可能な開発目標)と盛んに言われていますが、流行りのキーワードということではなくて、もっと本質的なこととして捉えていきたいと思っています。

会社の事業の継続性ということから考えると、当社の場合、限りある海洋資源をどうやって継続的に調達していくかは、非常に大事なことです。今までシーチキンは、ビンナガマグロ、キハダマグロ、カツオという3種の海洋資源だけを原料としていたのですが、これからは例えば鶏肉など畜産物も使いながら、やっていかなくてはいけないと思っています。

また、大豆タンパクなども、今、特にアメリカなどでは非常に注目されています。牛や豚の肉は、いろいろな意味で供給が難しくなってくる恐れもあるので、大豆タンパクなども使いながら、安価で良質なたんぱく質を手頃な価格で消費者に届けることを考えていきたいと思っています。

──なるほど。「環境」についてはいかがですか。

後藤 元々、缶詰はエコな商品なんですね。常温で流通させていますし、スーパーで陳列する際も一切冷蔵設備などを必要としない。かつ容器は90%以上、アルミやスチールのリサイクルが確立されています。ですから、非常に環境にやさしい。

また缶詰というのは災害時に社会に非常に貢献できる側面もあります。防災食として、災害大国日本の中で缶詰が果たせる役割を、営利を超えたところで考えていきたいと思っています。

──次に「健康」についてはいかがでしょうか。

後藤 青魚の缶詰やパウチ(小型の袋)はDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)など不飽和脂肪酸がたくさん含まれていて大変健康に良いのです。また、当社では低糖質のパスタも開発しています。

最近ではオイル不使用のシーチキンが、好評をいただいています。カロリーが通常の油漬のシーチキンの4分の1程に控えています。当社の製品はどれを召し上がっていただいても、健康には自信をもっておすすめできる製品ばかりです。

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