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檜原麻希:ニッポン放送初の女性社長に就任

2019/10/15

  • 檜原 麻希(ひわら まき)

    ニッポン放送代表取締役社長
    塾員(1985文)。大学卒業後、ニッポン放送入社。デジタル事業局長、取締役編成局長、常務取締役等を経て本年6月社長に就任。

  • インタビュアー池上 真之(いけがみ まさゆき)

    サクラス代表取締役、グロービス経営大学院客員准教授・塾員

デジタル時代に見直されるラジオ

──ラジオの在京キー局初の女性社長に就任されたということで、おめでとうございます。

檜原 有り難うございます。直前に内示されたので自分でも驚きました。

──ラジオ局は今、デジタル技術の進展や、従来は関係してこなかった業界との競争など変化が激しいですね。

檜原 今年は時代も平成から令和に変わり、オリンピックの1年前でもあり、世の中でいろいろなことが起きていますね。

メディアではデジタルシフトとかパラダイムシフトという言葉が、もうこの10年、あるいはこの5年ぐらいで加速しています。4マス(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)と言われる既存メディアのビジネスモデルは変化しないとやっていけない。社会の構造やルールも変化している。それに対応するのは大変だなと思っています。

ラジオで言うならば、2010年からラジコ(radiko)というデバイスができたこと、AMのラジオ局が、ワイドFM(FM補完放送局)というものに対応したことが大きな進化です。また、今、スマートスピーカーが世の中に登場してきたので、音声メディアは、これからの社会でアイズフリー、ハンズフリーということで、重要視されると思います。

──ラジオが見直されてきたということでしょうか。

檜原 ラジコができたおかげで、再び若年層がラジオを聞いてくれるようになったことは、すごく大きなことですね。ただ、われわれ民放局は広告モデルにずっと頼ってやってきたわけなので、もう1つ収益の柱を見つけていかなければいけないと思います。

──テレビ局も変化のときですが、ラジオはラジコをはじめ、一部ではテレビより先を行っていますよね。

檜原 そうですね。身軽な分、先に行っている部分はあるかもしれないですね。ラジコは2010年に、ラジオ局が大同団結してプラットフォームをつくったのですが、最近ではNHKもそこに参加している。今ちょうどテレビの同時配信が話題になっていますが、それに先駆けてやったのは、とても大きいことかもしれません。

放送というのは免許事業で、国民の共有財産である電波を使って発信しているので、その責任もあり、やらなければいけないことはたくさんあります。当然24時間365日のサービスなので、働き方改革も意識を変えてやっていかないと、今までのやり方では間に合わないですね。

新しい時代の価値観を探って

──昔のマスコミのイメージだと、制作のために、食事もせずに寝泊まりしているイメージがありますからね。

檜原 まだ昭和の価値観というのも多く残っています。平成、そしてこれから令和という新しい時代の価値観もどんどん出てきて、3つの時代の価値観やモノが混在する時期になると思うのです。転換期なのかもしれませんが、どちらかに極端に寄るのではなく、バランスを上手く取って、いろいろな価値観から新しいものをつくっていく時代だと思います。

──昭和の時代に比べると女性の社会進出も進んできています。キー局ではテレビも含めて初の女性社長ということについてはいかがでしょうか。

檜原 取り上げやすいトピックスなので、そう言われることが多いですけれど、「どう思われますか」と言われてもなかなか難しい(笑)。時代の要請なのかもしれず、たまたまのタイミングなのではないでしょうか。

ただ日本では、女性登用と毎日、新聞には出ていますが、それが騒がれているということは、まだまだ進めなければいけないということでしょうね。

──昔はやはり女性だと大変だった、ということはありますか。

檜原 この業界はそういうところは差別なくやってきたとは思うんですね。でも、コンサバティブな部分は強くあって、部長以上の会議で女性を見かけることは少ない。

ただ、今の時代のほうが、セクハラとかパワハラとかがフィーチャーされやすいぶん、かえってやりにくいのではないかと思うところもあります。女性進出に役に立てるのだったら、後輩のために積極的にアドバイスはしていきたいと思います。

──前例踏襲の社会では、こうやって檜原さんが最初の例になることはいいことですね。

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