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若松格:アメリカ車を運転する感動を提供

2019/07/15

乗って感動する車を目指して

——そういう経験を積み、日本のマーケットに帰ってきていかがですか。

若松 日本は、買い物の過程でお客様との接点がだんだん薄くなってきていますね。昔は販売店のショールームに行って車を見比べたり、あるいは自動車雑誌を読んだりして、知識を深めた上で購入していた。でも、今はほぼインターネットで調べてきて、販売店を訪問するのは2回未満です。

だから、興味・関心を持った人たちといかに接点を創出するかということを心掛けています。イベントもそうですが、もっと販売に近いところでは、例えば大きな駅前で展示をして、車を見ていただく機会を多くする。

また、キャデラックは「パワーウーマンプロジェクト」というものを一昨年からやっています。

——それはどういうものですか?

若松 格好いい、影響力のある女性にアンバサダーになっていただき、まだリーチできていない女性層に訴求しようとしています。女性が活躍して自立していく中で、素敵なアンバサダーたちがキャデラックに乗って活躍するイメージを見せたいということです。

例えばこの間は「ゼロトレ」という、ニューヨークで新しいヨガを考案した石村友見さんにアンバサダーになっていただき、実際にお客様にレクチャーをしていただく機会を作りました。

そうやってお客様との接点をつくり、記憶に残るような、ときめく体験を提供することが理想です。車とそれにかかわる体験を楽しむことには、普遍的なものが必ずあるはずです。今、GMジャパンでやろうとしていることは、そこを追求していくということです。

カーシェアリングもあるかもしれないけれど、GMの車を実際に見てもらい、憧れてもらいたい。乗って感動する、そして乗った瞬間に生活の習慣が変わるぐらい、インパクトのある車を目指したいと思います。

——車の感動を知っている人が、車の魅力を伝えていくことはすごく大事なことですね。若松さんは、いつごろから、車に関する仕事に就きたいと思ったのですか。

若松 就職するときですかね。日本に帰ってきて小学校に編入したときは、あまり帰国子女がいない時代でした。ですので、自分が異質な存在だと思い、アメリカっぽさをなくして皆と同じようにしようと考えていました。

大学時代、アメリカに行くことがあり、幼少の頃の原体験が戻ってきたんですね。グレイハウンドバスでニューヨークへ行く途中、自分の中で封印していた、そのふたが急にぱっと開いて、いろいろな記憶が走馬灯のように甦ってきたのです。そのときに、今まで自分らしく生きてこなかったのだな、と気づきました。

この先はそれを自分で認めて生きていかなければいけない、というところから、日米の間でできることがあったらいいなと思いましたね。そんなときにヤナセがGMの車を扱っていることを知って、ぜひGMをやらせてくださいと、言いました。だから入社したら楽しくて仕方がなかったですね。

——きっと今の仕事は天職なんでしょうね。今日は有り難うございました。

GMジャパンにて

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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