三田評論ONLINE

【話題の人】
藤原かおり:「フルグラ」の売り上げを10倍に

2019/01/16

マーケティングの概念が変わる

——30億を100億にするような大きいプロジェクトは、それまで「ボルヴィック」などではやっていたのですか。

藤原 やっていないですね。ここに来てマーケティングという概念が180度変わりました。松本は「100億に伸ばす必要がある。でもお金は使うな」ですから(笑)。

普通はコマーシャルを打ち、シェアを何パーセント伸ばすかですよね。私がフランスの会社で習ったこととは全然違う。「えっ、何を言っているの、この人」と(笑)。

でも一緒に仕事をしていると、お金を使わなくてもこんなに伸ばす方法があるのだと、すごく勉強になりました。

——どういう方法なのですか?

藤原 テレビコマーシャルに比べると、広報がメディアに紹介して取り上げていただくPRというのはお金がかからないんです。

後は店頭での試食販売と、個食パックの試食サンプリングを、例えば牛乳の宅配ルートに乗せてもらうことは、とても喜んでやってくれるのです。

——確かに、牛乳と一緒に食べるものですものね。

藤原 そうですね。PRの方はオフィスで働いている方々が軽く食べられる朝ご飯というイメージがメディアに取り上げられると、コマーシャルより効果がありました。

松本は、国内の市場を見ると、もうスナックは飽和状態ですから、子どもが減って高齢の方が増えていくと、健康にいいものが伸びていくという目算を持っていたのですね。

最年少執行役員となって

——カルビーは松本さんの時代に女性の活躍がぐっと進みましたね。日本の会社は人事や広報などには女性の執行役員や部長クラスの方が増えてきていますが、その会社の商売や事業のど真ん中で、要職に女性が就いているケースはまだ本当に少ない。

そういう意味では、藤原さんは先鞭をつけられていると思うのです。2017年にカルビーで最年少の執行役員になられてどんな感じでしたか。

藤原 こんなに苦しいのかと思いました。数字が悪くて計画とギャップがあるときは、ものすごいプレッシャーです。ダイレクトにCFOから、いつまでに数字が戻るのかと言われます。もう「誰かお願い」というのはできないので、矢面に立っていますね。

——どうやってそのプレッシャーに打ち克つのですか。

藤原 この会社ですごくいい思いもさせてもらったし、会社にもっと貢献したいという思いもある。また、いつかはいいときが来るでしょう、というのが、何となくあるんですよ。

——そこはポジティブですよね。でも結局、そのプレッシャーに向き合って頑張れるのは、マーケッターとしての専門力ということですね。

藤原 そうですね。今は商品の未来や市場の可能性が見えているというのもあるので、苦しくても頑張れるのだと思います。

——お仕事で煮詰まったり、苦しいときは、どうやって気分転換するのですか。カルビーは働き方改革も進んでいますね。

藤原 おかげさまで、休暇は取りやすいので、いただいた時間を使って旅行に行ったりしています。2018年にはシチリアに行きました。年に1回、長く休むと1年間頑張れるので。

——働き方改革も、毎日残業をしないというのではなく、ガツンと休みを取り、頭の中にたまっているものを掃除する期間があると、生産性が上がると思うんです。でも、日本人は長く休みを取るのはすごく苦手ですね。

藤原 休み方も松本の話がとても参考になっています。まず休暇を3つに分ける。9日間取るなら、最初の3日は前にやっていた仕事の整理で多少引きずり、中の3日は何も考えない。最後の3日は、仕事へ復帰するためにぼちぼち戻ってくる。休み方は上手にならないといけないですね。

カルビー本社にて
カテゴリ
三田評論のコーナー

本誌を購入する

関連コンテンツ

最新記事