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藤原かおり:「フルグラ」の売り上げを10倍に

2019/01/16

  • 藤原 かおり(ふじわら かおり)

    カルビー執行役員フルグラ事業本部本部長
    塾員(1997政)。大学卒業後、旭硝子(株)入社。ダノンウォーターズジャパン(株)等を経て、2011年カルビー入社。17年より現職。

  • インタビュアー石原 直子(いしはら なおこ)

    リクルートワークス研究所人事研究センター長・塾員

社内失業からのスタート

——藤原さんは中途入社でカルビーに来られ、シリアル食品「フルグラ」の担当として、松本晃会長(当時)とともに事業を育て、売り上げを5年で30億円から300億円規模まで約10倍に伸ばされました。最初はどこの会社に入られたのでしたか。

藤原 旭硝子です。そこで5年働いて広告代理店に転職し、その後、ダノンというフランスの会社の日本法人で「ボルヴィック」を担当していました。

そして、外資系で4年くらい働いてみて、日本の会社で世界に発信していくような仕事がしたいと思うようになり、ちょうどカルビーが募集をしていたので、2011年に入社しました。

1年目は新規事業で、「ソイジョイ」とか「カロリーメイト」のような市場に新規で参入したんです。「ひとくち美膳」という新しい商品だったんですけれど。

——ちょっと記憶にないですね(笑)。

藤原 はい、わずか1年で終わってしまったんです。松本が、「これは何年頑張っても伸びる商品ではないからやめます」と。私、これのために入社したんですけど(笑)。

それで、「どうしよう、社内失業だ」となったときに、シリアル事業の責任者から「いま松本会長が伸ばせ、伸ばせといっているプロジェクトだから、フルグラでもやったら」と言われました。これが「30億だったフルグラの売り上げを100億にする」というプロジェクトなんですね。

「シリアル」を日本に浸透させる

——シリアルは、日本では朝食として浸透していなかったので、いろいろ苦労があったと思います。

藤原 松本の着眼は、アメリカのシリアル市場全体は1.2兆円ある。人口で割ると、彼らは1人、年間4千円食べていると。

日本は当時、全体で250億の市場で、1人、年間250円しか食べていない。アメリカ人と日本人で、消費量でこんなに差があるものはシリアルだけで、これはおかしい。ここに着眼して、軽く日本の市場でも1千億ぐらいにはなるはずだからと。

そのうちの10%のシェアですから、「簡単でしょう」と言う(笑)。

——松本さん、すごい〝無茶ぶり〟ですね。

藤原 でも、いきなり「200億」と言わずに、「100億やれ」と、頑張れば届きそうな目標を言うんです。何か「できるかな」という気になってしまう。それで市場データを見てみると、そもそも棚に置いているお店があまりない。

置いている店では結構売れていたから、ちゃんと置いてもらえれば100億まではいけるのでは、と思いました。

——まずは、知ってもらうということですね。何年で100億までいかれたのですか。

藤原 約2年間で95億までいきました。それで「ああ、見えたな、100億」と思ったら、「今度は200億のプロジェクトだ」って(笑)。

——フルグラは私も食べていますが、急速に認知度が上がりましたよね。競合するのはどこになるのですか。

藤原 ケロッグさんの商品ですね。グローバル企業でシリアルにはものすごく長い歴史があり、商品開発のシステムもしっかりしていて、ラインアップも幅広い。そうすると、やはり棚で負けているのです。

私が担当し始めたときも、ほとんど全部ケロッグさんで、そこをどう切り崩していくかというのは、いまだに課題です。

——マーケティングチームには何を具体的に提案したのですか。

藤原 最初は、お客さんに「欲しい」と言ってもらえる環境をつくろうと、PRにすごく力を入れました。「グラノーラ」というカテゴリーを認知してもらうために新聞やテレビに取り上げてもらう。それで認知されるようになると、お店も会社の営業も、「これは置かなきゃ」と、少しずつ広がっていくんです。

その次に新しい商品アイテムを増やして、少しずつグイグイと(笑)。

——カルビーと言えばポテトチップス、かっぱえびせんですから、社内の営業の人に「この商品を売ろう」と思ってもらうまで大変でしたでしょう。

藤原 最初は本当に大変でした。皆さんスナックが好きで入社してくるので、フルグラはそんなに食べない。1991年に発売して以来、20年くらいずっとそうでしたので。

——そんなに歴史のある商品なんですね。今は味のバリエーションがすごく増えていますよね。

藤原 チョコクランチ&バナナなどはお子さんにも好評のようです。チョコは皆さん好きですので。

——ターゲットとしては主に女性ですか。

藤原 でも、購入者の4割が男性なんですよ。意外と単身赴任の男性とか、奥さんが朝食に手をかけてくださらない男性に人気みたいです(笑)。

——今、世の中で標準世帯と言われている、有業者1人の4人世帯は、実はもはや5%未満しかなくて、一番多いのは無業の1人世帯、次は有業の1人世帯なんですね。だから、誰かがしっかりした朝ご飯をつくってくれるという環境の人は少ない。

藤原 そうですね。高齢の男性にこそ、勧めたいと思っています。

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