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島田由香:新人事制度「WAA」が変える日本の働き方

2018/06/26

自分であることにもっと自由に

——SFCの3期生ということですが、3期生というと、まだ大学の中で、学生自らが考えてつくっていくような場であったように思うのですが、このことが、島田さんが今の考え方を身に付ける上で影響があったのでしょうか。

島田 そうかもしれません。最初はびっくりしました。思ったよりも田舎で(笑)。でも、真新しい校舎に最新のMacを置いた教室があって、学生にもラップトップのパソコンが配られて……。新しい場所で、新しい時代を切り開いていく感じがありました。どこか違う世界に来たようで、すごく魅力的でしたね。花田光世先生のゼミでは、ディスカッションして考える、手足を動かして自分で見にいくということを徹底的に行いました。プログラミングの授業も面白くて取っていました。そういう環境が、考え方の形成にも影響しているのでしょうね。

——人事という仕事をやりたいと大学のときから思われていたのですか。

島田 大学に入ったときは国際関係の仕事をやりたいと思っていました。でも、大学2年生の秋学期に、花田先生の組織論の授業を取ったことが、私にとっての転機になりました。 いろいろな企業の人が毎週来て話をしてくださるのですが、ある日の講演後、銀行の方が「今は会社も元気がない。皆さんのような新しい人材に入ってほしい」と言ったのです。それを聞いて、組織は人の集まりなのだから、一人一人が元気なら組織も元気なはず。元気がない人がいるなら元気づけたい、と感じました。人事という仕事があることにそこで気づいたのです。これは面白そうだと思って、その日のうちに花田先生のゼミに入ることを決めました。

——今これだけWAAが話題になると、就職活動をする学生からも非常に人気があるのではないかと思うのです。

島田 そうですね。私はユニリーバに入社してから、毎年新卒採用をしているので、毎年ものすごい数の学生に会います。とても優秀で意欲的な学生もいる一方で、就職することが目的になってしまっている人や、控室と面接の部屋ではまったく態度が違う人もたくさん見て、危機感を覚えています。

なぜそうなのか考えて、思い出したのが、留学したときの体験でした。留学して初めて、日本の教育では間違いが許されていないことに気づきました。人前で間違えたくない、だから発言する前にすごく時間をかけて、頭の中で言うことを考えてから手を挙げる。でも、アメリカでそんなことをしていたら、スピードに追いつけず、自分の意見など言えない。グローバル化を掲げても、こういう教育が続く限り、いつまでたっても日本人はものが言えないままだと思い当たりました。

日本人が何も考えていないかというと、もちろんそんなことはありません。実はものすごく深い思考力とたくさんのアイデアがある。なのに、言わない。これが変わるといいなと思っています。学生にも、働く人たちにも、自分である、自分らしくあるということに関して、もっと自由であってほしいです。

——本当にそうですね。今日は有り難うございました。



ユニリーバ・ジャパン会議室にて
※所属・職名等は当時のものです。
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