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山澤文裕:スポーツ医学への貢献で国際陸連功労章を受章

2018/05/01

東京2020に向けて

——山澤さんはご自身でも陸上をされていたのですよね。

山澤 本格的にやりだしたのは慶應志木高からで、医学部に入ってからも医学部の競走部、そして三田の体育会にも一緒に練習に加わらせていただき、大学5年生のときに箱根駅伝の予選会にも慶應の代表として走りました。非常に楽しい経験でした。

東日本医科学生総合体育大会という医学系の大学生の大会では5000メートルでは一応金メダリストです(笑)。

——素晴らしい。

山澤 しかし、いまから考えると、もうちょっと練習してスポーツに関して勉強しておけば、もっといい記録が出たはずだと思っています(笑)。

——スポーツ医学の道に進もうというきっかけはどういったところから。

山澤 荻窪病院長であった浅野眞先生が医学部競走部の大先輩で、日本陸連の医事委員長でした。私が呼吸器内科の大学院にいたときに、浅野先生より「そろそろ、あなたも手伝いなさい」と言われて80年代後半からお手伝いするようになったんです。先輩からのその一言がなければ、やっていなかったかもしれない。

——慶應はやはりスポーツ医学に関しては浅野先生、あと山崎元先生あたりの世代がいたわけです。

山澤 浅野先生は92年から国際陸連の医事委員を12年間務められています。その後、私が2004年からやっているんです。

——東京2020では、慶應病院が国立競技場と一番近いということで、国立競技場の観客救護を担当します。そのワーキンググループの中に山澤さんにも入っていただき、いま準備をしている最中です。山澤さんのように国際大会を経験しているドクターが慶應の中にいるということは、非常に強みだと思っています。

山澤 私は東京2020では日本陸連の医事としてフィールドで競技をしている選手や審判の方々に対応する仕事になります。観客対応とフィールドの対応の連携をよくするのが、ワーキンググループの役割で、大会を成功させるのに非常に重要なことですね。特に熱中症対策などもありますから。

——インフィールドのほうに山澤さんがいらして、観客とか後方支援は慶應病院が対応する。

山澤 また、東京オリンピックでは慶應は日吉キャンパスを中心として包括的に英国チームの大会前合宿をサポートする予定なので、これは世界中に慶應の名前を売るいいチャンスです。慶應のおかげで金メダルが取れた、と英国の選手に言ってもらわないと(笑)。

——いや、本当に重要です。

山澤 ファシリティだけ出しても駄目です。いろいろなヒューマンリソースとか、本当に選手が必要としているものをきちんと準備して、満足して帰ってもらう。やはり先行投資が必要だと思います。

——いわゆる「おもてなし」ですよね。いま学術交流などの話が先行していて、おもてなしの部分が少し置いていかれている感じなので、そこは少し軌道修正しないといけませんね。

山澤 ホストユニバーシティとしての役割が非常に重要です。選手が泊まるロッジメントから練習会場まで、どうやって行くのか。用具搬送はどうしたら良いか。そういう細々としたものを選手団は欲しがっていて、それをやると賞賛されるのですね。

——アンディ・マレーが「慶應は素晴らしい」なんて言ってくれれば(笑)。

山澤 このプラーク・オブ・メリットはIAAF会長のセバスチャン・コーから渡されたんですよ。彼は前の英国オリンピック委員会の会長で日吉にも来られていますね。ですから、慶應への期待は大きいと思います。

——そうですね。今日は大変有意義なお話を有り難うございました。


※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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