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中島基晴:特産品で地域の魅力を発信する

2017/05/01

東京での経験を地元で生かす

——ご自身のUターンを振り返ってみて、いかがですか。

中島 やはり、外から地元を見るというのは、違った目線で見ることになります。福山に限りませんが、地方はやはり閉鎖的で、内々で盛り上がって、というのが当たり前になっています。一度外に出て中を見渡してみると、変革すべき箇所が見えてきたりもします。一気に変える必要はなく、徐々にバランスよく変えていく。そういうスキルを身につけることができたのはよかったと思います。

伊藤忠というグローバルな会社、慶應義塾というグローバルな大学、そして東京という多種多様な人たちの中で生活し福山に戻ることができたのは、本当に恵まれていたと思います。

——それは地域の魅力、特産品の魅力を再発見することにもつながりますね。

中島 そのとおりです。地元にいると、いいものが当たり前にあって、灯台下暗しになる。一度外に出て帰ってくると、これはすごいものなんじゃないかと気づく。歴史もあるし、おいしいし、県外でも通用する、とわかるんです。そういう目が養えましたね。

——私はいま国際入学広報も担当しています。慶應の魅力を今後どう発信すべきか、アドバイスをいただけますか。

中島 もちろんグローバル化の取り組みも大切ですが、やはり国内で、地元ベースで地道にファンを増やしていくことも重要だと思います。地元や自らの魅力を高めて、それを海外の人が見て、「慶應って素晴らしい大学だね」と思ってもらえるのが理想ですね。

情報発信についても、表面的な情報は、ネットでいくらでも入手できますよね。そうではない、福澤先生の教え、義塾社中の本質を改めて伝える必要があると思います。

——これからこういうことをやっていきたい、というものはありますか。

中島 保命酒を軸にしたときと同じようなサイクルを、福山特産品のアンズや、生産量日本一のクワイなどで展開していくことを考えています。

このビジネスモデルを継続し、自分がいまやろうとしていることを、従業員だけではなく、地域の若い人たちにも伝えていきたいですね。地域貢献は、自分だけが潤うのではなく、地域全体に利益が落ちなくてはいけません。そうなれば自分も助かるし、相手も助かる。

地方でも、いずれは地域間競争が顕著になってきます。その中で、地元出身の塾の後輩が戻ってきてくれて、共に地域の活性化を目指して歩んでくれたらと強く思います。

——ますますのご活躍を期待しています。今日はありがとうございました。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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