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【義塾を訪れた外国人】
ヘルムート・シュミット:義塾を訪れた外国人

2018/03/03

グローバル・ビジョンの人として

氏は著名政治家としては稀有な長寿であった。

2015年11月11日、96歳にて逝去したが、ドイツのメルケル首相は、「シュミット氏がドイツに比類なき貢献を行ったことを長く忘れない」との弔辞を送った。ドイツのみならず、世界各国からも弔意が寄せられたが、特に英紙『ガーディアン』は、社説のみならず、追悼記事を多数掲載して故人を偲んだ。その中の1つの署名記事は、歴代の西ドイツ首相は一様に「ドイツ問題」を何よりも語ってきたと記し、アデナウアー首相は、アメリカやフランスとの同盟政策(西方政策)を語り、ブラント首相は、東方政策を唱え、そしてコール初代統一首相は、東西両ドイツの融合政策を語った。ただ、その中でシュミット首相だけは、グローバル・ビジョンを持つグローバル・チャンセラー(首相)であった、と。

今年2018年は、シュミット氏の生誕100年にあたるが、世界情勢は混迷を深めるばかりである。最晩年のシュミット氏は、何を思い、何を案じていたのか、その詳細を今となっては知る由もない。しかし、4半世紀前にその謦咳に接したものの1人として、そのことを物語るのは次の古詩が何よりも相応しいと思われてならない。

老驥(ろうき)は、櫪(うまや)に伏すも
志は千里に在り
烈士は暮年になるも
壮心は已まず
  曹操(魏武王)(井波律子訳)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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