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【三田評論と昭和100年】
「三田評論と昭和100年」過去記事翻刻・再掲にあたって

2025/06/05

本年、2025年は昭和100年、そして戦後80年という節目である。様々な雑誌やその他メディアが「昭和100年」を謳った特集などを組んでいるが、そのような年に、本誌『三田評論』は今号で通巻1300号を迎えた。そこで、6月号はいつもの特集の形式を変え、昭和年間に本誌を飾った記事を何本か選び、翻刻・再掲することとした。また巻頭の口絵には昭和時代の代表的な表紙を掲載したので、そちらも参照いただければ幸いである。

まず、簡単に『三田評論』の歴史を振り返ってみたい。『三田評論』はその前身が『慶應義塾学報』であったということはご承知の方も多いと思う。1898(明治31)年3月に創刊、発刊の趣旨には「義塾の精神抱負を世間に発揚すること、福澤先生を始め同社先輩の論説談話または内外学術教育の新説を取り上げ、学事や塾員の消息も加えること」とあり、慶應義塾基本金への寄付者と寄付金額を巻末に掲載しているところなど、今と変わりがない。

その後、学術評論雑誌として市販を目指す動きがあり、1915(大正4)年1月、通巻210号から現在の『三田評論』に改題された。なお、『三田評論』の名前は、明治末に学生による機関誌にすでに使用されていた(明治41年廃刊)。この機関誌は明治42年に『三田学会雑誌』として生まれ変わる(現在も『三田学会雑誌』は慶應義塾経済学会の機関誌として刊行されている)。

さて、本号に再掲した記事であるが、昭和100年という節目ということから、昭和時代に限らせていただいている。

ご存知のように大正天皇は1926(大正15)年12月25日に崩御されたため、昭和元年は7日しかなく、昭和初の号は1927(昭和2)年1月号(通巻353号)となる。この号は、昭和2年1月1日発行と印字され、林毅陸塾長からの天皇陛下崩御についての謹告等も掲載されているが、印刷・製本の時間的制約を考えると、現存している版が本当はいつ発行されたのか、考えさせられる。

一方、昭和最後の号は、本誌では毎月1日を発行日としていることから、1989(昭和64)年1月号(通巻899号)となる(昭和64年も7日間しかない)。昭和年間で547号が発行された計算だ。もっとも戦時中、昭和18年の542号から543号にかけては、実際には1号分しか発行されていないにもかかわらず、号数表示が2号分なされており、これは正確な号数ではない。

「戦争」は昭和の時代に大きな影を落とし、まさしく画期となっている。すなわち『三田評論』にあっても1943(昭和18)年の12月から戦後1951(昭和26)年10月に550号で復刊するまで、実に8年近くの休刊期間がある。ちなみに1923(大正12)年9月の関東大震災では翌10月の1号のみが休刊しているだけなので、戦争がいかに大きな影響を慶應義塾ならびに本誌に与えたか、想像するに余りある。

実際に戦前の『三田評論』のバックナンバーを時代順にたどっていくと、戦争が深刻化していくにつれ、ページ数はどんどん減少、紙質はどんどん悪化、休刊やむなきに至るといった事情が物理的に実感できる。戦前最終号の昭和18年10・11月合併号(549号)は、本文わずか20ページ。紙質は劣悪を極め、その数年前の華やかさとは比べようもない。

復刊後も550号の潮田江次塾長の「復刊の辞」にあるように「まだ現在のところでは、経費その他の関係上季刊とし、且つ配布の範囲も自ら限られざるを得ない実状にあり」ということで、1960(昭和35)年末までは不定期刊行であり、月刊の定期刊行となったのは翌1961年からであった。

昭和年間547号分(本当は546号分)というのは膨大である。この中から的確にセレクトをした選集を編むことなど到底不可能に近い。いきおい編集部の興味関心にしたがって選択をしていくことになったが、普段あまり目にすることのない「戦前」の論考・記事が分量的に多くなってしまった。内容のみならず時期の上でもバランスを欠いていることは始めにお断りしておきたい。

記事選択にあたっては慶應義塾福澤研究センターの都倉武之教授に適宜ご助言をいただいた。厚くお礼申し上げる。(編集部)

記事の翻刻・再掲にあたっての編集方針は次の通り。

(凡例)

1 原文(初出時)が「旧字旧かな」のものは「新字新かな」に改めた。ただし、「慶應義塾」「福澤」、またその他人名表記で通例本誌にて旧字を使用しているものは、そのままにしている。また肩書きは執筆時のものである。

2 明らかな誤字脱字は修正した。また読みやすさを考え、改行、ルビを加えるなどしている箇所もある。

3 今日の人権意識に照らして、不適切と捉えられかねない表現もあるが、記事の歴史的価値を鑑み、そのままとしている。

4 適宜簡単な註を文末につけた。

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