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【特集:東アジアから考える国際秩序】
西野 純也:東アジア研究所の40年とさらなる発展を目指して

2025/03/05

  • 西野 純也(にしの じゅんや)

    慶應義塾大学東アジア研究所所長、法学部教授

東アジア研究所の前身である地域研究センターが設立されてから40年の節目を迎えました。同センターは慶應義塾創立125年記念事業の一環として、当時の石川忠雄塾長のリーダーシップの下に1984年4月に設立されました。慶應義塾は創立以来一貫して世界の様々な地域や国家の特性や情勢を解明する地域研究とその教育に力を入れており、同センターはそうした基礎を固め、さらに発展させることを目的として活動してきました。アフリカ研究の小田英郎先生を初代としてスタートして以降、中国研究の山田辰雄先生、朝鮮半島研究の小此木政夫先生、そして中国研究の国分良成先生と、錚々たる研究者がセンター長を歴任してきました。

東アジア研究所は、地域研究センターの約20年にわたる活動実績を踏まえて、東アジア地域により焦点を合わせた研究体制へと改組しつつ、同センターの名称を変更する形で2003年10月にスタートしました。国分先生に続いて、東アジア国際政治の添谷芳秀先生、中国研究の高橋伸夫先生、台湾研究の三尾裕子先生が歴代所長を務めてきました。2023年10月には、東アジア研究所20周年の記念シンポジウムを開催しています。

地域研究センターの時代から今日に至るまで、東アジア研究所の活動を支えてきた大きな柱が2つあります。1つ目の柱は、学術研究プロジェクトの実施とその成果の出版です。研究所では慶應義塾大学の教員がリーダーを務める2年間のプロジェクトを毎年2つずつ立ち上げています。したがって、常時4つのプロジェクトが稼働しています。その成果は全て学術書として刊行されており、その数は今や74冊に達しています。このプロジェクトの実施は、財団法人高橋産業経済研究財団の支援により可能となっています。同財団に深く御礼を申し上げます。

2つ目の活動の柱は、隔年で実施している東アジア研究所講座です。毎回テーマを設定して、塾内外から専門家を招いて講演シリーズを開催しており、学生や社会人など多くの聴衆の参加を得ています。この講座も講演録をもとにした書籍を刊行しており、まもなく18冊目が刊行されます。

加えて、研究所の活動を支えているのは研究所の中に設置されている2つの研究センターです。2007年に現代中国研究センターが、2009年に朝鮮半島研究センター(当初は現代韓国研究センター)が設立され、独自の研究プロジェクトを実施したり、シンポジウムや研究会を頻繁に開催しています。

私は2023年10月に所長に就任した際、これまでの活動を今後も継続しながら、次の3つを意識して研究所のさらなる発展を目指すことを掲げました。第一に、研究所主催のシンポジウムや研究会の開催を増やして、運営の「活性化」を図ることです。ポストコロナ時代を迎えたことを受けて、研究所内の2つのセンターと積極的に連携、協力をしながら、これまで以上に主導的かつ積極的に研究・学術交流及び議論の場を提供するよう努めていきます。第2に、研究所の活動と成果の一層の「見える化」を進めることです。研究所及びセンターの活動やその成果が皆様の目に留まるよう発信の仕方をさらに工夫していきます。そして第3が「ネットワーク化」です。第1、第2の活動を通じて、日本さらには世界の東アジア研究者及び研究機関との連携、ネットワーク化を促しつつ、研究所がネットワークの要としての役割をしっかりと果たし続けることを目指します。ネットワーク化については、2024年11月に、アメリカのコロンビア大学、ジョージワシントン大学にある東アジア関連の研究所と共催で、現地において公開シンポジウムを開催することができました。

本号の特集に収められた内容は、地域研究センターの時代から数えて東アジア研究所が設立40年を記念して、2025年1月18日に三田キャンパスで開催された公開シンポジウム「東アジアから考える国際秩序」の記録です。研究所に縁のある研究者たちの登壇を得て、時宜にかなった素晴らしい報告と議論がなされました。このシンポジウムにより、研究所のさらなる発展に向けた良いスタートを切ることができました。今後とも、研究所の活動への皆様の引き続きのご関心とご支援、ご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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