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【時の話題:ポイントとどう付き合うか】
鄭 美沙:シニアの「ポイ活」

2026/02/26

  • 鄭 美沙(てい みさ)

    第一生命経済研究所ライフデザイン研究部主任研究員・塾員

シニアの半数以上がポイ活を実践

「ポイ活」(ポイント活動)はシニアの間にも広がっている。買い物やサービスの利用によってポイントを貯めて活用する通称「ポイ活」は、キャッシュレス化の進展とともに、幅広い年代に普及しつつある。

筆者が所属する第一生命経済研究所は第一生命カードサービスと共同で、2024年に50~79歳の男女2,400人を対象とした「高齢者の生活と意識に関する調査」を実施した。その結果によると、50~79歳の56.7%が何らかのポイ活を行っていた。年代による大きな違いはなく、50代のミドルシニアから70代のシニアまで半数以上が実践していた。

具体的なポイ活の内容としては、「買い物の時、ポイントカードを提示する」(よくする=44.3%)、「ホームページ上のポイントサイトを利用する」(同33.8%)、「高額な買い物をする時には、ポイントを意識して決済方法を選ぶ」(同28.9%)といったポイ活をする人が多くみられた。

筆者の周囲には、動画サイトでポイントのお得な貯め方・使い方の解説を視聴し、実際にそのとおり行動する人や、移動距離に応じてポイントが貯まるアプリを外出時には欠かさず起動する人など、積極的にポイ活を行うシニアもいる。このように、ポイ活には様々なスタイルがあり、ポイ活をする人にとってはそれらが日常の行動の一部になりつつある。

ポイ活に影響を与えるデジタルリテラシー

ポイ活をする人としない人の違いの一つとして、デジタルリテラシーの差が挙げられる。先述の調査より、8種類のアプリ・デバイス(ヘルスケアアプリ、地図アプリ、ショッピングアプリ、SNS、メッセージアプリ、動画視聴アプリ、ウェアラブルデバイス、家族向け写真・動画共有アプリ)の利用状況を比較したところ、8種類のうち「使ったことがあり、今後も使っていきたい」と回答した数は、ポイ活をする人では平均4.24個であるのに対し、していない人は平均3.43個にとどまった。さらに、スマートフォンで銀行預金の残高管理やネットバンキングを行っている割合も、ポイ活をする人はしていない人より高い。

ポイ活では、ホームページ上でポイントを貯めたり、店舗でアプリのポイントカードを提示するなど、スマートフォンを活用する場面が多い。こうしたことから、デジタルデバイスを使いこなせるデジタルリテラシーの高さや、使おうとする意欲の有無が、ポイ活に影響していると考えられる。

金融ジェロントロジーから考えるポイ活

ポイ活には、「節約」のほか、歩数に応じてポイントが獲得できるサービスを利用すれば「健康増進」にもなるなど、様々なメリットがある。他方、ポイントを貯めること自体に執着するなど、ポイ活は必ずしも経済合理性に基づく行動ではないケースもある。ポイントが多く貯まるからと、本来必要のない商品まで購入してしまった人も少なくないだろう。

特にシニアのポイ活においては、認知機能の低下によるトラブルや課題にも留意する必要がある。理解力や判断力、記憶力などは、加齢とともに衰える。こうした認知機能の低下が、経済活動や資産選択に及ぼす影響を研究する学問分野は「金融ジェロントロジー」と呼ばれ、慶應義塾大学でもファイナンシャル・ジェロントロジー研究センターで研究が進められている。

金融ジェロントロジーにおけるポイ活の研究はまだ多くないが、今後検討すべき視点の1つと考えられる。たとえば、「ポイントの用途や期限に制限があった」「ポイント付与の条件を満たしていなかった」「どのアプリ・カードにポイントが貯まっているのか把握できない」といったことはシニアでなくても起こり、認知機能が低下した際には、一層気を付けなくてはならない。さらに、前述のとおり、スマートフォンなどを活用してポイントを貯めることも多いため、悪質なサイトや詐欺に引っかかり、金銭的被害や個人情報の漏洩なども起こりうる。

ポイントサービスを安心して利用するために

こうした課題に対応するためには、ポイントの仕組みやリスクについて理解を深め、「ポイ活リテラシー」を高めながら、必要に応じて周囲のサポートを得てポイ活をしていくことが望ましい。また、経済行動においてポイントが欠かせない存在となっている中、年代問わず金融経済教育にどのように位置づけるべきか議論が求められるだろう。同時に、ポイントの利用実態や行動への影響について、これまで以上に体系的な研究を進める必要がある。

そして、今後もポイントサービス市場の拡大やシニアの利用者の増加が見込まれるため、事業者には分かりやすいサービスの設計が一層求められる。誰もが安心して利用でき、信頼できるポイントサービス市場が形成されることが期待される。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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