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【時の話題:副業の時代】
労働市場流動化への先駆──兼業・副業が拓く未来

2019/11/18

解禁がもたらすメリット

短期的視点での直接的な経営や業績へのメリットは期待していないが、外部のネットワーク構築や就労経験は「キャッシュアウトのない人材育成」とも言える。スキルあるシニアが外に活躍の場を得るケースもあるだろう。中長期的には、多様な視点からイノベーションが起こり得る。多くの企業が同調すれば産業全体でのイノベーションも期待できる。働き方の多様化は、優秀・多才な人材を惹きつけ、人材の獲得に貢献する。需給が逼迫するデジタル人材等、必ずしも長期雇用を志向しない高度専門人材を副業先として受け容れることも期待できる。

副業の容認に象徴される「自由な労働市場の形成」は、深刻化しつつある労働力不足に対する有力な対策の1つとなり得る。

兼業・副業はこれからの労働市場の必然であり、この時流を先取りしてメリットを積極的に引き出そうという狙いがある。今後は兼業・副業を促進する仕組みにも取り組みたい。

流動化は時代の必然

労働力不足が進む一方で産業構造の変化、多様化は加速している。役割期待が固定化された人材を長期に抱え込むことは組織にとってリスクになる。個人の志向も多様化し、組織に丸抱えで人生を託そうという人は減っている。

多様な価値観が混在する中で、必要な時に必要な場所で必要な能力が生かされるという労働の流動化が、日本の社会全体で、さらには国境を超えて定着する時代が来る。

個人の提供価値を市場でやりとりする社会は、自由ではある反面、厳しい競争・格差構造を生む恐れを孕む。労働の流動化が不可避な選択肢であるとしたら、それをどう昇華していくのか。

様々な分野で、雇用形態を問わず、個人の多様な能力を部分的にでも活かせる就労、すなわち価値提供の機会があり、個人がそれを自由に選択できることで社会全体がセーフティネットとして機能する。兼業・副業はそんな未来を拓くキードライバーになり得るのではないか。組織としても個人としても越えるべきハードルは高いが、真剣に考えるべき命題である。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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