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【時の話題:副業の時代】
副業と個人、副業と企業

2019/11/18

  • 山田 英夫(やまだ ひでお)

    早稲田大学大学院経営管理研究科教授・塾員

2018年1月、厚生労働省のモデル就業規則が改正され、その雛型から「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」が削除され、「勤務時間外に、他の会社等の業務に従事する事ができる」に変わった。このモデルは、就業規則を作る際に参考とする企業も多く、急に副業が注目されてきた。

改正の背景には、生産年齢人口の減少がある。少子化・高齢化が進む中、政府は女性の活用、定年延長、外国人の受け入れと次々に手を打ってきた。しかし労働力不足は解消されず、そこで、働き方改革で残業の減った会社員にも目が向けられた。また労働力の偏在も深刻で、中小企業は短時間でも働いてくれる人材を求めている。

会社員にとっての副業

近年、賃上げは思うほど進まず、年功序列、終身雇用も崩れてきた。大企業では、ある年齢を超えると仕事の魅力も処遇も落ちる役職定年が増えてきた。中高年の間で、人生100年をどう生きていくかという自問が始まった。

一方、若手社員も先輩社員らの状況を見て、自らのスキルを磨いたり、副収入も考えるようになってきた。起業する知人も増え、会社に頼らない人生の選択肢が身近に思えてきた。

また、転職先に希望する人事制度の中で、副業の可否が一番関心を持たれているという調査もある。単なる高給よりも、副業の自由のある会社が求められてきたのである。

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