【時の話題:ドローン社会の到来】
ドローン利活用に向けた法的課題
2019/08/19
1.ドローン利活用の現状
ドローンの利活用は、法的整備がされる以前の趣味のラジコンヘリから始まり、主として産業利用としての空撮、農薬散布等に利用されていました。
2015年の改正航空法施行当時の飛行許可承認件数が1000件/月だったのに対し、2019年4月には同4500件/月と4倍以上に増加しています。この数字はドローンの機体数および操縦者の増加を意味します。
飛行許可承認件数の内訳をみると、空撮が44%ともっとも多く、以下測量(13%)、インフラ点検・保守(12%)、事故災害対応(12%)、報道取材(7%)、農林水産(6%)となっています。
測量、インフラ点検・保守は作業の効率化、作業の安全性の向上に資することから、現在もっともホットな分野です。昨年の西日本豪雨等の災害時にドローンの映像で被害の実態をいち早く把握することができたのは、記憶に新しいところです。農業分野では、これまでの大型産業用無人ヘリから小型のドローンによる農薬散布へと共存・併用が始まり、またスマート農業の利活用も一部始まりつつあります。
このような利活用が促進されたのは、機体性能の向上もありますが、ドローンの飛行に関する基本的なルールが定まり、産業への参入に心理的な障壁がなくなったことも少なくないと考えます。そこで次に、ドローンの飛行に関連する航空法および小型無人機飛行禁止法について概説します。
2.改正航空法の概要
(1)航空法改正の経緯
2015年4月22日に首相官邸の屋上に微量の放射性物質を積んだドローンが落ちているのが発見され、安全面に対する懸念が高まりました。そこで国際的な状況も踏まえ、まず緊急的な措置として、基本的な飛行のルールを定める法規制が急ピッチに整備され、同年9月11日に改正航空法が公布、同年12月10日に施行されました。
(2)概要
規制の対象となるドローンは、①航空の用に供することができる回転翼航空機等であって、②構造上人が乗ることができないもののうち、③遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもので、④その重量が200g以上(機体本体の重量とバッテリーの重量の合計)のものをいいます。
また、改正航空法では「無人航空機」という章を新たに設け(第9章)、飛行の禁止空域を定めています。すなわち、①空港周辺の空域、②高度150m以上の空域、③人又は家屋の密集している地域の上空、の3つの空域が飛行禁止空域として設定されています。
さらに、無人航空機を飛行させる場合、飛行させる空域にかかわらず、飛行方法の制限があります。原則的な飛行方法は以下になり、これを守らなければなりません(改正航空法132条の2)。
①日中の飛行、②目視の範囲内での飛行(機体のカメラの映像を頼りに飛行する場合は目視外飛行となります)、③人又は物件との間に30mの距離を保っての飛行、④催し場所上空以外の空域においての飛行、⑤危険物を輸送しないこと、⑥物件を投下しないこと。
飛行禁止空域で飛行したい場合、または原則的な飛行方法によらずに飛行したい場合(夜間飛行、イベント上空飛行など)は、国土交通大臣に飛行許可・承認申請をし、航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全を損なうおそれがないとして許可・承認を受けた場合は、これを飛行させることができます(航空法132条・132の2但書)。
3.その他の規制
改正航空法の遵守のほか、国の重要施設(国会議事堂や、各省庁の建物、原子力発電所、ラグビーW杯・東京オリンピック・パラリンピックの会場等)の上空およびその周囲300mの上空を飛行するには、飛行の48時間前までに管轄する警察署に「通報書」を届け出る必要があります(小型無人機飛行禁止法)。
改正航空法が上空の航空機の航行の安全及び地上の人・財産の安全の確保を目的としているのに対し、小型無人機飛行禁止法は、国の重要施設の危険を未然に防止し、国政の中枢機能等及び良好な国際関係の維持並びに公共の安全の確保を目的にしています。
4.今後の法的課題(第三者上空の飛行)
目視の範囲内での第三者上空の飛行については改正航空法施行当初より審査要領は定まっているものの、実際にドローンの飛行許可は出ていないのが現状です(安全性基準が高く、これに適合するドローンが存在しないため)。
その他、プライバシー保護、土地所有権と上空利用のあり方等についても政府を中心に検討が始まっています。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
2019年8月号
【時の話題:ドローン社会の到来】
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三田評論のコーナー |
八角 浩史(はっかく ひろし)
ドローン法務アドバイザー、行政書士・塾員