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柳町 達:リーグ最高出塁率とベストナインでチームの日本一をけん引
2026/03/16
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インタビュアー大久保 秀昭(おおくぼ ひであき)
前慶應義塾大学体育会野球部監督
シーズン初スタメンで摑んだ手応え
──プロ6年目で迎えた2025年シーズンはチームが日本一に輝くとともに、柳町選手自身もパ・リーグ最高出塁率、ベストナインを獲得しました。おめでとうございます。
柳町 有り難うございます。
──体育会野球部時代の監督として、ご活躍を誇りに思います。昨シーズンは飛躍の年となりましたが、どんなきっかけがあったのでしょうか。
柳町 一番大きかったのは、シーズン最初のスタメンを迎えた4月23日です。それまで、代打出場では良い状態を保ちながらも、なかなか結果が出せずにいました。
ヒットが出れば軌道に乗るのでは、というタイミングでスタメンに起用され、左打者に強いオリックスバファローズの曽谷龍平投手からホームランを打つことができました。この時の打撃は、自分にとって潮目が変わる実感があったのです。
──ホームランを打った時はどんな心境でしたか?
柳町 この日はホームランを含む3安打という結果を残すことができ、ヒーローにも選ばれました。ようやく打てたという安堵感と、曽谷投手を攻略できたという手応えがありました。内角高めのストレートを引っ張ってスタンドまで運べた時に「今年はいけるかもしれない」と感じました。
──開幕は2軍でのスタートでした。選手層が厚くライバルの多いホークスで「またか」という気持ちはありませんでしたか?
柳町 レギュラー争いの激しい球団なのであまり悲観的にならず、今年もはい上がるだけだ、と前を向いて臨みました。それよりもチャンスに応えられるよう準備を怠らないことのほうが大切でした。
──前半戦にスタメンの機会が増え、6月初旬からの交流戦では12球団トップの打率.397で交流戦首位打者、そしてMVPを獲得しました。この間にどのようなことを心がけていましたか。
柳町 交流戦は普段対戦する機会のない投手が相手なので、ボールをしっかり見ることを考えました。まず球筋を確認するために、すべての対戦で初球はあえて見送ることを心がけたのが良い結果に繋がったと思います。
──1打席勝負となる代打起用ではじっくり良いボールを待つほどの余裕はないですよね。スタメンで起用されるようになってボールを見きわめる余裕が生まれたのですね。
柳町 そうですね。全試合スタメン出場した交流戦の間はとても状態が良く、1ストライク取られても大丈夫だと思える余裕がありました。1打席目で球筋を見きわめ、2、3打席目でボールをしっかり捕えることを意識しました。
集中力を高める気持ちの切り換え
──学生時代から滅多に三振しないイメージがありました。ミート力は柳町選手にとって大きな武器だと思いますが、プロとして6年間を過ごしてどうでしたか?
柳町 今はむしろ三振が多いと思っていますが、それは割り切って打席に立った結果でもあります。良いコースにボールが決まればそれはもうピッチャーの勝ちと割り切ります。その代わりに失投は絶対に見逃さないという意識を強く持つようにしています。
──以前は速球に対し、バットの先端が遅れて出る印象がありました。打撃フォームを変えるといった対策をしたのでしょうか。
柳町 最近は速球に対し、スイングの始動を早めてゆっくり振る感覚を大切にしています。早いスイングをしようと力むことなく、タイミングを早めにとって「ダラッと振る」イメージを持つことにしたのです。その結果、上手くボールを捕えられるようになりました。
本当に微妙な修正ですが、後半戦も結果を出すことができたのはこの感覚を摑めたことが大きいと思います。
──なるほど。試合前や打席に入る前に心がけているルーティンはありますか?
柳町 ホームゲームでは15分ほど仮眠をとってから試合に臨むようにしています。ナイトゲームは午前11時頃に球場入りし、球場を出るのが午後11時頃になり、とても長い。そうしたサイクルの中で、昼寝をすることで試合中にも集中力を持続できるようになりました。
──スタメンに定着すると一定のサイクルで準備ができ、余裕も生まれるのでしょうね。代打の選手は試合終盤まで待つことが多く、それなりに疲れるのではと思います。
柳町 そのとおりです。代打が多かった一昨年のシーズンはリズムが不規則で、身体にも随分負荷がかかりました。
──スタメンならその日は凡退しても翌日に切り換えられる。プロで大成する選手は皆切り換えが上手ですよね。
柳町 良い選手は結果を引きずりませんね。僕も次の日を元気に迎えるために何をすべきかつねに考えています。
──昨シーズンの柳町選手は打席に立った時の顔つきが違いました。集中できている様子が画面からもよく伝わってきました。
柳町 実は交流戦後の後半戦、30打席くらいノーヒットだったことがありました。この時は早く結果を出さなくてはという焦りから本当に余裕がなくなってしまい、1試合だけスタメンから外れました。集中できている時は雑念や不安な要素がなく、強い目つきで打席に立てていると思います。
「自分の強み」は何か?
──6年間のプロ生活で2025年に初めて日本一に輝きました。この間、ホークスでは二度監督が代わり、来シーズンは小久保裕紀監督の3年目となります。小久保野球とはどういうものですか?
柳町 プロとしての個の力を高めチームの輪をつくる野球です。入団1、2年目の工藤公康監督、3、4年目の藤本博史監督と比べ、小久保監督は全体練習の時間が最も短いのですが、その分個人の時間が重視されています。一軍経験の日数にかかわらず、選手たちは皆、チームの勝利よりも自分のベストパフォーマンスを考えるよう言われており、個人練習の時間を使って自分の足りないところを磨いています。
──小久保監督からは「チームをけん引する存在」と評されました。自分の中で何か変化はありましたか?
柳町 そう言われた時の僕はまだレギュラーを狙っている立場だったので、この1年はとにかくやるしかないという思いで自分のやれることに集中してきました。
──柳田悠岐選手や近藤健介選手、山川穂高選手といった主力選手はプレーの中でリーダーシップを発揮するタイプのように見えます。柳町選手はどんなリーダー像を描いていますか?
柳町 近藤さんは試合中に一番前で声を出し、山川さんは誰よりも早くその日の準備を始めます。柳田さんはその場にいるだけでチームが盛り上がる。3人とも最大限のパフォーマンスを発揮するための行動の中から自然とリーダーシップが溢れ出ています。
僕もまずは自分のやるべきことに集中し、気迫溢れるプレーで周りが元気になるような選手になりたいと思っています。
──監督とのコミュニケーションの中で印象に残っていることはありますか?
柳町 入団間もない頃、工藤監督に「プロの世界で何を売りにするか、自分の強みを考えなさい」と言われました。この言葉は今も自分の中に響いています。
──今の「自分の強み」は何だと思いますか?
柳町 ここぞという場面での集中力や勝負強さではないかなと思います。良くない結果に引きずられない能力はプロ生活の中で身についた強みだと思います。
──高校や大学では違った?
柳町 高校時代は気持ちを切り換えることが苦手で、むしろ「ダメだったら終わり」と考える性格でした。大学でようやく切り換えを意識するようになり、「ダメだったら次」と割り切れるようになったのはプロになってからのことです。
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柳町 達(やなぎまち たつる)
福岡ソフトバンクホークス外野手
塾員。2020年福岡ソフトバンクホークス入団。2025年シーズン、パ・リーグ最高出塁率、ベストナインを獲得し、チームの日本一に貢献。