【演説館】
上鹿渡 和宏:社会的養育の課題と里親養育への期待
2026/01/23
すべての子どもに必要な「パーマネンシー」「アタッチメント」「こどもの権利」
パーマネンシーは永続性が保障される親子関係や特別養子縁組で実現されると理解されてきましたが、子ども視点で次のような定義もなされています。
子どもがこれからずっと続くと感じられる、将来の見通しを持った育ちの保障である。(…)そこに所属していると感じられ、いつでも戻れる場所であり、いつでも頼ることができると信頼できる1人以上の人との「つながり」である。それは周りの大人ではなく、子ども自身が定義するものであり、社会的・制度的に認められたものである。それはすべての子どもに対して社会が保障すべきものである。*1
アタッチメントについては、子どもが養育者とのやりとりを通して安全と安心の基地を得て、様々な遊びや挑戦を通して育つことの重要性を理解する必要があります。社会的養護の中でも、安全や安心を得ることの重要性は理解されていますが、遊びや挑戦もセットで重要なことまでは理解されていないことが多いと思います。
こどもの権利については、こども基本法や子どもの権利条約の内容があまりにも当たり前で「当然満たされているはず」と思い込んでいる大人や、気づかない大人に対して諦めてしまった子どもも多いのではないでしょうか。社会的養護では、子どもの権利の視点で見直すことで当たり前の経験や関係の不足・欠如に気づくことも多く、この視点で思い込みを見直すことの重要性に気づかされます。
私は社会的養護から学んだこれら3つのキーワードを「大切な大人とのつながり」「安心と挑戦」「自分らしく育 つ子ども期」と言い換えて、見落としてはいけない、すべての子どもに保障されるべきものとして、多くの方に伝えたいと思っています。まずは社会的養護下の子どもにこれを保障すること、そこからすべての子どもに、さらにそのような子ども時代を持つことですべての大人にも保障する取り組みを続けていきたいと思います。
里親養育を突破口として社会的養育を社会化する
日本では社会的養護における子どもの最善の利益の保障が、主に施設養護の枠組みの中で考えられてきましたが、2025年度からの各自治体の社会的養育推進計画では施設から家庭養護への移行だけでなく、親を支援し子どもが家庭で安全安心に自分らしく育つ場を保障することが目指されるようになりました。社会的養育における2つの課題を同時に解決する動きとも言えます。同時に取り組むことで、子どものニーズに合わせた社会的養育を実現できる大きなチャンスでもあります。
これからの里親養育は、親子分離後だけでなく、親と一緒に子どもを育てることが期待されています。具体的には里親ショートステイが全国に広がっています。これは里親家庭で子どもを数日間預かり、親を支援する制度です。中学校区に1家庭を目指してこのような支援の充実を計画する自治体もあります。また、里親が地域で子どもを育てるには専門的な支援のほかに、子どもの通う学校や、共働き家庭の場合は会社の理解や協力も必要です。里親制度について一般にはほとんど知られておらず、社会的養育は未だに社会化されていませんが、今後、里親が地域で「子どもといっしょにいながら親を助ける」存在となるには、これを進める必要があります。社会的養育を社会化することで社会的養護下の子どもだけでなく、すべての子どもや家族にとって生きやすい地域や社会が実現されると私は考えています。
「自分の子どもだったら、自分が子どもだったら」と思い、考えてみてください。私は児童精神科医、子ども家庭福祉の専門家として考え、早稲田大学社会的養育研究所*2やNPO法人家庭養育支援機構*3での研究や実践を続けています。
いっしょに考え、行動する人が必要です。
注
*1 畠山由佳子・福井充編(2023)『パーマネンシーを目指す子ども家庭支援』岩崎学術出版社
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
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