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【演説館】
古澤純一郎:目指せ! 日本一楽しいゴミ拾い

2019/07/23

様々な企画で人を呼び込む

まずはゴミ拾い自体のイメージを変えたい。ゴミ袋をかわいくし、参加してくれる人にスタンプカードを渡し、スタンプが満たされると「ゴミ拾いの達人Tシャツ」がもらえるようにしました。

イベントも行いました。海に流れ着くタバコのフィルターを5分間で誰が1番拾えるかというゲーム(排水口が海の入口ということや、街と海のつながりを説明)、面白いゴミを拾った選手権(面白いゴミを最後に発表してもらい、どんなゴミが落ちていたかをみんなで共有)それぞれの種目で1位になった方には、江の島特製いかの塩辛をプレゼント。ゴミ拾いに参加してくれた方のファッションを紹介。ゴミ拾いのあとにまかない料理をつくり、みんなで夕日を見ながらくつろぐ、などなど、様々なことを企画しました。

すると少しずつはじめての方が来てくれるようになり、今は多いときには、1日に1000人も来てくださるようになりました。

特に現役のお相撲さんがまわしをつけて一緒にゴミ拾いをし、キレイになったビーチで参加者と相撲ができたら楽しい、という発想で生まれた「どすこいビーチクリーン」には、多くの街の方たちが来てくれるようになりました。サッカーチーム、湘南ベルマーレの選手にも来てもらいました。そこで当時の湘南ベルマーレの社長と仲良くなり、15000人動員される湘南ベルマーレのサポーターの皆様に「海にゴミは行かせない!」を合言葉にスタジアムで動画を流し、スタジアムでのホームゲームの試合終了後にゴミ拾いをする(一年で約20試合)、LEADS TO THE OCEAN(通称:LTO)を日本財団様と一緒に立ち上げることができました。

現在LTOには、Jリーグ9チーム、プロバスケットボールチーム1チーム、プロ野球チーム1チーム、合計11チームが参加し、各地で年間約220回ゴミ拾いを実施し、約250万人の街の方たちに海の現状を伝えられるようになりました。

そのLTOの活動では、ゴミを拾ったらサッカーボールになるゴミ袋を制作、使用したり、数多くゴミ拾いに参加してくれた方は「ゴミ拾いマスター」としてグラウンド内で選手から表彰状がもらえることにしています。

その他、釘を1本も使用しない「釘のない海の家」を建設したり、海遊び、外遊びする子供達が減ってきたので、「ちびっこBEACH SAVER パーク」を浜辺につくったり、海の日に青いサンタクロースの恰好でゴミ拾いしたりと、本当に沢山のチャレンジをしてきました。しかし、いまだ、海のゴミは減っていません。

湘南海岸で1年で回収されるゴミは、鎌倉の大仏、47体分(約6000トン)。当然、回収されないで海に流れていくゴミ、沈んでいくゴミは、その何倍もあるはずです。

2050年には、海では魚の量よりもゴミの量が多くなると言われています。本当にこのままでは、そうなると危惧しています。

どすこいビーチクリーンの様子

エコブームとSDGs

我々の活動10年目(2015年)に、組織をNPO法人海さくらにしました。そのとき、国連サミットでは持続可能な開発目標(SDGs)が採択され、国際目標の1つに「海の豊かさを守ろう」が2030年までの国際目標になりました。

昨年くらいから「スターバックスがプラスチック製ストローをなくす」「各地でレジ袋をなくす」などの報道がされるようになり、海への関心が高まり、我々の活動を後押ししてくれています。しかし、そこにはどうしても「他人事」で自分事ではない伝え方になっているのでは、という懸念もあります。つまり「あっ、スターバックスがプラスチック製ストローを廃止するのね」で意識がとまり、「なぜ、なくそうとしているのか?」「なぜ、レジ袋をなくそうとしているのか?」と個人が考えるまでに達していないと思うのです。

「なぜ?」が伝わっていないので、このままだと、ゴミは海に流れ続け、悲惨な海になるのではと思います。逆に「ゴミがなくなるとこんな素敵な海になる」ということが、可視化されていません。

このSDGsからの大きな流れを一過性のブームにせず、これからも我々は、「なぜ?」や「海の未来予想図」をわかりやすく説明しながら、「目指せ!日本一楽しいゴミ拾い」活動を実施していきます。

そろそろ「海にゴミは行かせない!」と皆様の心の隅にまだある小さなウルトラマン魂を海や自然に向けていただけると嬉しいです。海は人間だけのものではなく、魚や海鳥を含めたほか皆のものです。魚をさばいていたらゴミが出てくるような状況にしたくありません。ゴミはいつか未来の子供に戻っていきます。やるなら今しかない!

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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