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【Researcher's Eye】
川口 航史:日本政治研究と教育の輪郭

2026/03/23

  • 川口 航史(かわぐち ひろふみ)

    慶應義塾大学総合政策学部准教授
    専門分野/ 政治過程論

大学院で日本政治を研究対象として選んだ私にとって、研究者としての自身のスタンスやあり方を考える機会は、さほど多くなかったように思う。他国の政治を研究する院生仲間が、日本で他国を研究する意味や、その国の国内の研究潮流と日本国内のそれとの差異を真剣に考えていたのに対し、母国である日本で日本政治を研究している私は、良くも悪くもその必要性をあまり感じずに研究を進めていた。

この問いを考えるようになったきっかけは、自身の留学であった。そこで出会った、日本政治をそれほどよく知らない人々に、どのように自身の研究関心の意味を伝えるか、果たして自身の研究にはどのような意味があるのかを考えるようになったが、明確な答えは得られなかったように思う。

その後、日本に戻って博士課程を修了し、研究員として北海道の大学で研究に従事したり、教員として沖縄の大学で教えたりするようになった。その場所のローカルニュースを見聞きし、日々の暮らしを営む中で、日本政治の持つ多面性を意識する機会も増えた。教育機会も増え、研究者としてだけではなく、教育者としての自身の果たすべき役割も考えるようになった。

現在の職場では、主に留学生を対象とした、英語による政治学の授業も担当している。研究者としての私は、他国の政治への視座も得られるような、一般化可能性のある日本政治の研究を心掛けてきた。他方、受講生の多くは日本政治のユニークさに興味があるようで、ここにも微妙なずれがある。さしあたり、様々な政治制度の違いによって日本政治と他国の政治の違いを説明することで、両者の均衡が取れた授業を目指しているが、結論ありきではないか不安もある。

大学における自身の専門として政治学を選んだのは、これを学べば世の中の仕組みがわかるようになるのだろうと思ったからでもあったのだが、実際は学べば学ぶほど、わからないことも増える。このような自分が他人に何を教えられるのだろうと思う一方、このように逡巡する姿を見せるのも1つの教育のあり方ではないだろうか、などとも考えながら、研究や教育に取り組む日々である。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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