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【Researcher's Eye】
園田 薫:マイノリティの多様さを捉えるために

2026/03/17

  • 園田 薫(そのだ かおる)

    慶應義塾大学商学部専任講師
    専門分野/産業社会学、人的資源管理論

これまで私は、日本で働く優秀な外国人と、それを雇っている日本企業が、お互いにどのような思惑でその雇用関係を結び、持続させ、解消するにいたるのかという、労使双方の意図を分析してきました。1つの結論は、双方の期待を誤認した「同床異夢」のまま雇用関係が成立してしまう点にミスマッチの根源的な問題があることです。それは昨今DEIや多様性という言葉で浸透するように、雇用社会で劣位に置かれたマイノリティとなりうる性質(マイノリティ性)をもつ人材を取り込もうとするなかで顕在化していることです。以上の結論が見えてくるにつれ、これまでマジョリティであり続けてきた私の立場から、徹底的にマイノリティ性について考える必要があると強く感じるようになりました。

人間が織りなす社会は多様で複雑で、簡単に説明しきることはできません。他者を理解したと思い込むことの暴力性と傲慢さは自覚しなければなりません。それでも経済が動き続け、今この瞬間も雇用社会のなかで誰かが働きにくさを感じ、疎外され、不安定な生活を送っています。それは外国人かもしれないし、女性や障害者、もしかしたら障害を抱えた外国人女性かもしれない。その「誰か」には、どのような共通性があるのか。悩みを抱える人々の属性を予め限定することは避けなければなりませんが、この点を愚直に考え続けることができたなら、その苦しみを少しでも共有できるようになり、みんなで現状を変えることができるかもしれない。その鍵は、マジョリティ/マイノリティの線引きと両者のあいだで生み出される関係を考え抜くことで得られると直感しています。

私は現在、研究者としての矜持をもって「あいだ」に立ち続け、常に悩みながら関係を理解し続けようとする存在でありたいと考えています。これまで扱ってきた個人・企業も限定的ですし、今後はもっと多くの産業・職業へと分析の裾野を広げたい。外国人の雇用を専門としつつも、国籍の違いだけに限定せず、マイノリティ性とは何かという問題にアプローチしたい。そのためには、より多くの立場から、ともにこの問題を考える人が必要です。マイノリティと呼ばれる人たちの多様さを捉えるために、そこに何かの共通点を見出すために、ぜひ皆様との対話の機会が得られれば望外の喜びです。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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