【Researcher's Eye】
足立 朋之:ごみの出ない学校を目指して
2025/11/28
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使い捨ての時代はいつまで続くのだろうか。中等部3年生対象の選択授業「SDGsのすゝめ」を担当して今年で6年目を迎える。生徒たちと一緒にサーキュラーエコノミー(循環型経済)について考えていると、その時代の終わりは近づいてきているようにも感じられる。資源を可能な限り長く使おう。そして、使い終わってもすぐ廃棄するのではなく、再利用したり、再資源化を図ったりしよう。こうした考え方を念頭に、SDGsに積極的な企業と連携して、アップサイクルやリサイクルに取り組んできた。「世界一ごみの出ない学校」を目指して日々チャレンジしているわけだが、学校内を見渡すと、持ち主不明の落とし物が意外と多い。しかし、それすらも大切な教材となる。
例えばビニール傘。手軽に購入できて便利だが、ビニール、柄の部分のプラスチック、金属の骨組みに分解するのが厄介で、最終処分場で埋め立て処理されていることが多い。国内では年間8000万本が捨てられるというのだから何とかしたいものである。そこで、授業でビニール部分を外して回収し、アップサイクルブランドにお願いして、生徒のアイデアをもとにノートカバーを作ってもらった。
続いて文房具。使い終わったプラスチック製文房具を回収し、再資源化しているメーカーにワークショップを行っていただいた。ペンを分解して、樹脂素材ごとに分別する作業を体験したり、万年筆を組み立てたりした。インクを補充して使い続ける万年筆は、究極のエコな筆記具かもしれない。
それから水筒。ふたはプラスチック製で、ボディがステンレス製の単一素材のものは再資源化しやすい。中等部で始めた水筒の回収は、今では他の一貫教育校や大学キャンパスからも集まってくる。生徒がデザインしたイラスト入りの水筒を販売して、売り上げの一部を環境団体に寄付している。
そして、新たに取り組んでいるのが基準服(制服)。サイズが合わなくなったものや卒業生から寄贈されたものを回収後に繊維に戻して、再び糸から制服へと蘇らせる「循環型制服」を2028年度から導入することとなっている。
さて、つぎは何をリサイクルできるだろうか。究極はごみの出ない学校。近い将来、義塾全体が「ゼロ・ウェイスト・キャンパス」になったら面白い。
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足立 朋之 (あだち ともゆき)
慶應義塾中等部社会科教諭
専門分野/ 人文地理学