【Researcher's Eye】
福田 紀子:大谷翔平選手に学ぶ睡眠のコツ
2025/09/16

皆さんは、ご自分の睡眠に満足されているだろうか。「もっと深く眠りたい」、「もっと熟睡感を得たい」と私は朝目覚めるたびに思う。睡眠アプリというものを試したことがあるが、100点中60点にも満たない点数を連日つけられた。中途覚醒が多いこと、ベッドに入ってから入眠するまでの時間(睡眠潜時という)が長いことが点数の悪さに影響しているようだ。
睡眠は、ライフコースを通じて人々の健康の維持、増進に不可欠な休養活動である。そして肥満、糖尿病や心疾患など慢性疾患の発症や予後にも関与している。健康日本21では、睡眠時間の確保、睡眠で休養が取れているものの割合を目標数値で示し、国を挙げての取り組みがなされてきた。さらに睡眠と心の健康は関連しており、精神看護学を専門分野とする私にとって、睡眠は関心ある研究領域の1つである。そして加齢とともに睡眠の質が低下し、D評価をつけられた私にとって、睡眠は自分自身の健康課題の1つでもある。
さて、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手は、最低でも1日10時間の睡眠をとり、寝具メーカーと契約してマットレスや枕をカスタマイズして睡眠環境を整えているという。彼が睡眠にこだわるのは、最高のパフォーマンスを達成するためである。「最高の睡眠」は「最強の覚醒」とワンセットで考えることが必要だ。大谷選手が日々のトレーニングや試合で消費したエネルギーを回復させるためには、十分、かつ質の良い睡眠が不可欠なのである。彼が、世界中の人たちを魅了するパフォーマンスを日々、更新できているのは、1日の半分の時間を睡眠に費やして、休息をとっているからといえよう。大谷選手に学ぶ睡眠のコツは、この点にある。
人は、「疲れたから眠る」、「夜になったから眠る」の2つの機序で眠りに落ちる。起きている時に疲れを溜め、生体リズムに沿って、夜になり眠るのだ。私の場合、夕食後に40分程度、ウォーキングをして汗をかき、それから入浴し、深部体温が下がってきたところでベッドに入る。すると寝付きも良いし、中途覚醒の回数は少なくなり、睡眠が格段に良くなることに気づいた。これからの季節は熱中症に留意しつつ、良い睡眠のために身体を動かし、疲れを溜めることをお勧めしたい。翌日の仕事のパフォーマンスの向上を期待する。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
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福田 紀子(ふくだ のりこ)
慶應義塾大学看護医療学部教授
専門分野/ 精神看護学