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【Researcher's Eye】
深川 和己:学生の夢を応援するために

2025/09/05

  • 深川 和己(ふかがわ かずみ)

    医療法人慶翔会理事長・塾員
    専門分野/眼アレルギー疾患

学生時代の僕はヨットと世界を放浪することに夢中で、留年してしまいました。そんな時に尊敬する先輩の坪田一男先生のご紹介で、国際医療研究会を創設した大上正裕先生のご指導を得る機会を得ました。さらに当時の安田健次郎医学部長や石川忠雄塾長の暖かいご協力を得て、1985年に日中医学生交流協会を設立しました。国交回復直後の中国を訪問し、多くの学びと二度とできないような経験をすることができました。一学生の夢に真剣に向き合ってくださった慶應義塾の諸先輩方の熱い心に触れ、その情熱に深く感動しました。そして、「いつか自分も後輩の夢を応援したい」という思いが芽生えました。

年月が経ち、2004年に医学部同窓会(三四会)の理事として赤倉山荘の運営に携わる機会を得ました。そして、眼科同期の楊浩勇君と共に「慶應赤倉アカデミー(KAA)」を立ち上げました。KAAでは、学生と世界で活躍する先輩方が集い、アカデミックなテーマだけでなく人生についても語り合います。学生たちのきらきらとした眼差しと、先輩たちの語る大きな夢に毎回感動させられます。その運営は次第に学生主体へと移行し、ついに学生団体として公認されました。さらに、かつて委員だったOBOGが三四会の赤倉山荘運営委員として活動を指導し始めました。世代を超えて引き継がれるシステムが確立されました。

KAAに関わる中で、学生の成長の速さにはいつも驚かされます。数年前から、大学生が自発的にKAA-Jrを企画しました。これは一貫校の学生たちに医療系3学部の大学生が学びの場を提供する企画です。気が付くと、日中医学生交流協会ももうすぐ40周年を迎えます。僕が訪問した頃とはレベルの違う素晴らしい学びを得ていることを感じます。これらはまさに「半学半教」であると感じます。そして2023年には、金井隆典医学部長のご提案を受け、北里柴三郎未来人材育成基金の設立に微力を尽くさせていただきました。

学生の頃、先輩方から受け取った熱い思いを、今後は私が後輩たちに伝えることができるとしたら幸せです。今後とも日中医学生交流協会、KAA、KAA-Jr、北里柴三郎未来先導基金などの活動を通じて、後輩たちの夢を応援し続けていきたいと思います。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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