【Researcher's Eye】
泉 美穂:ことばの力は全ての基礎──NYでの表現活動
2024/11/27
Zoom授業がまもなく終わり、生徒たちがニューヨーク学院に戻ってくる頃、何か今までにないクラブを作ろうと思った。画面上でしか会ったことのない生徒たちと、授業時間以外にも話したかった。生徒たちの反応は大きく、私が、Creative Workshopというクラブを立ち上げ、3年が過ぎた。年1回(昨年は2回)、部の雑誌を作った。部員がテーマを決め、そのテーマに合えば、エッセイ、小論文、小説、詩、短歌、俳句、ラップ、なんでもよい。また英語でも日本語でもよい。自分の好きな表現方法を選ぶ。巽孝之学院長、顧問の私も生徒たちと共に文章を書く。テキスト、チャットを超えた、何かを「印刷」で残したい。そのような思いがあった。ある部員が自宅に冊子を持ち帰ると家族が居間でゆったりと読んでいたという。このような時を作りたい。
また、NY校の新聞「慶應ジャーナル」にも関わるようになった。学校行事、スポーツまたは現代社会における問題を生徒たちが英語と日本語で書いている。スポーツのクラブに参加しつつ、記事を書く生徒も増え、試合のレポートはより臨場感を増している。英語で世界情勢を分析する記事も増えてきた。新聞には特集記事を設け、編集に工夫をしているが、その中で、「福澤スピーチデイ」特集は特別なものとなった。毎年、2月に設けられている学校行事で、生徒の代表が、英語か日本語でスピーチをする。私はアドバイザーのリーダーとして、生徒たちと協力しつつ、スピーチの日を運営している。まもなく今年もスピーチをする生徒を募る時が来る。 私は生徒と共に何かを「築く」ことが好きなので、このような機会に感謝している。それは私の日本文学の授業でも同じである。生徒から学びたい。今年の夏は、日本語科で、教師の推薦リストもつけて読書記録を作る課題を出した。私もこの課題のおかげで、20冊の本に手を伸ばせた。この成果を元に、Creative Workshopでは私と生徒が協力して、「読書便り」を発行しようと企画している。もちろん英語の本の読書についてもレポートする。
「半学半教」。NY校で、福澤先生の教えを胸に、英語と日本語での表現の場──3つの文化── Keio, Japan and New York ──を意識して今後も生徒と共に表現活動を充実させていくつもりだ。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
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泉 美穂(いずみ みほ)
慶應義塾ニューヨーク学院(高等部)日本語科主任