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【Researcher's Eye】
藤田眞理子:英単語を定着させるのには?

2023/09/05

  • 藤田 眞理子(ふじた まりこ)

    慶應義塾湘南藤沢中等部・高等部
    英語科教諭 専門分野/英語教育

先日『英単語学習の科学』(中田達也著、研究社)を読んだ。その中で注目したのは「学習とテスト一致の原則」である。「学習の状況とテストの状況が近ければ近いほど、学習効果が高くなる」という意味らしい。例えば、単語カードの表に英単語、裏にその和訳を書いて、学習させれば、英単語を見て、和訳を思い出すというテストは高い学習効果を期待できるが、逆に和訳を見て、英単語を思い出すというテストは学習効果が低いそうだ。

今年は高校3年生のリーディング&ボキャブラリーという授業を担当している。単語テストは毎回行うが、「学習とテスト」は全く一致していないことに気がついた。単語帳の単語とその説明をながめることだけが生徒の学習になっている。英単語を書いて練習している生徒はほとんどいない。テストは単語帳の例文ではなく、別の英文を用い、テスト形式は選択問題・穴埋め問題・単語の並べ替えなどである。そこには生徒に単語の形・意味・使い方などいろいろな側面を覚えてほしいという教師の願いがある。しかし、一度に多くのことを学習させると、どれも習得できないと指摘する研究もあるようだ。英単語が定着しないのは生徒の学習と教師のテストの不一致のせいなのか。

そこで期末テスト対策として、テスト範囲のテキストに出ている単語からQuizletというツールを用いて、単語カードを220枚作成した。表に英単語を、裏にはその和訳を書き、テストの2週間前から生徒がインターネット上で使えるようにした。テストではそのうち20語を出題。クロスワード形式で、タテのカギとヨコのカギは和訳で、その和訳が示す英単語を書くという問題にし、学習とテストが一致するようにした。またテスト形式も事前に生徒に伝えておいた。効果は絶大だった。生徒数162名の平均点は20点中16点。20点満点を取った生徒は52名だった。以前のテストで、タテのカギとヨコのカギは和訳ではなく、英語で定義を書いたものを使ったことがあるが、生徒の出来はよくなかった。英語とその和訳のセットが生徒の脳に定着しやすいのかもしれない。

日頃の学習の効果はその学習にマッチしたテストで発揮されるということを生徒から教えてもらった。「学習とテストの一致」をこれからも模索していきたい。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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