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【Researcher's Eye】
石井誠:人と人とのつながりを大切に

2023/01/23

  • 石井 誠(いしい まこと)

    名古屋大学大学院医学系研究科呼吸器内科学教授・塾員
    専門分野/呼吸器病学・感染免疫学

私は慶應義塾大学医学部を1996年に卒業し、関連病院で6年の勤務と米国留学3年以外の17年余りを慶應義塾大学病院で勤務し、2022年6月に現職に着任しました。まだ臨床医としては道半ばですが、どの場面でも、人と人のつながりを大切にして活動しています。

研究面では、一昔前と異なり、少人数で研究してすべての成果を質の高い形で仕上げるのは、情報技術が発展した現在では困難となっています。大きな成果を挙げるには、ビッグデータの網羅的解析などが不可欠です。そのためさまざまなエキスパートの先生方と共同研究をして、研究プロジェクトを進めていくことが重要です。一緒に研究を進めるうえで大切なのは、人と人のつながりを大切にして構築した信頼関係をもとに研究を遂行することと考えています。慶應義塾大学勤務時代には呼吸器内科医として、COVID-19パンデミックの際には慶應義塾大学病院のCOVID-19診療チームのサブリーダーとして診療に従事しました。

慶應義塾の先生方は、コロナ禍においても研究を推進し新しい知見を発出しようという思いに満ちあふれ、医学部長を中心にCOVID-19の病態を明らかにすべく、通称「ドンネルプロジェクト」が立ち上がりました。私は臨床の実務責任者として研究にも携わり、学内の信頼関係の上に成り立つ密な連携により研究同意や検体採取の流れが速やかに確立し、さまざまな成果が発表されています。また金井隆典医学部長が立ち上げられ、呼吸器内科福永興壱教授が代表を引き継がれたコロナ制圧タスクフォースでは、私は代表施設の実務担当をさせていただきました。

義塾に加えて東京医科歯科大学、大阪大学などの、感染症学、分子遺伝学、ゲノム医学などさまざまな専門領域の先生方が協働し、参加施設は100を超える研究グループとなり、疾患感受性遺伝子DOCK2の発見とその分子の重症性を示した論文は、昨年Nature 誌に採択され、現在も研究は継続しています。お互いの信頼関係の上で成り立っていると実感しています。コロナ禍においても協力して学問的な疑問を明らかにし、世の中に発出していくことが重要であると学ばせていただきました。

今後も、「人と人のつながりを大切に」、感謝の気持ちを忘れずに、研究を進めていければと考えています。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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