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【Researcher's Eye】
冨崎悦子:子どもたちの輝く未来のために

2022/11/18

  • 冨崎 悦子(とみさき えつこ)

    慶應義塾大学看護医療学部専任講師
    専門分野/小児看護学・小児保健

私は今まで子どもたちの環境に注目して研究してきました。しかし、良い環境を考えるということは非常に難しいと日々感じています。研究する際には、どのような子どもになってほしいのかをはっきりとする必要があります。しかし、子どもは一人一人違うため、一つに限定することは難しいです。また、すべての子どもが対象なのか、病児など特定の子どもが対象なのかによって視点は異なると考え悩んできました。

子どもたちの環境に何が大切かを知るために、さまざまな子どもの専門家と一緒に研究をしています。みなさん子どもたちのことを真剣に考え、その幸せを願っておられるため、学びになることばかりです。その中で、特定の子どもたちにとって良い環境は、すべての子どもたちにとっても良い環境なのだと感じるようになりました。インクルーシブ保育をしている園の方たちから、専門職の人数も大事だが、それよりも子どもたちを信じ、子どもたちとしっかりと向き合うことで、障害のある子ども、そうでない子ども、その両養育者たちにとってもよい環境になるのだとわかりました。

また、養育者を支えることの重要性も学びました。今までの研究で、育児に関して話す相手がいる養育者の子どもは社会性の発達が良いことを明らかにしてきました。専門家からはサポートについて、養育者や子どもの状況によって量と質は異なるということを教えられました。子どものことを話したり、育児で困っていることを相談するのは、すべての養育者にとって重要なことです。一方、コロナ禍で仕事をなくし途方にくれているシングルマザー、人工呼吸器を利用していて痰を一時間ごとに吸引してもらわないといけないお子さんの養育者に対しては、話を聞くだけではなく、必要な援助へとつなげていくことが求められます。このように量と質という点では異なりますが、養育者を支える点では同じです。それぞれに合ったサポートが重要と言えます。

来年4月にはこども家庭庁が設置されます。基本理念の一つ「全てのこどもの健やかな成⻑、Well-being の向上」のためには、子どもたちに良い環境を整え、すべての子どもとその家族を支えていく必要があります。そのような社会となるように、必要な研究をしていきたいと思っています。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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