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【Researcher's Eye】
深堀浩樹:コロナ禍での看護学研究

2022/06/17

  • 深堀 浩樹(ふかほり ひろき)

    慶應義塾大学看護医療学部教授
    専門分野/老年看護学

Twitter を眺めていて、Journal of Advanced Nursing 誌編集長のJackson 博士(シドニー工科大学)による論説記事が目に入った。この論説ではこれまでに掲載されたCOVID-19に関する約200本の論文を編集長の立場で考察している。これに触発され、コロナ禍において私が行う機会を得た3つの活動について振り返りたい。

まず、公益社団法人日本看護科学学会のCOVID-19看護研究等対策委員会の委員として行った調査である。コロナ禍の会員の研究活動への影響と学会に求める支援についての調査協力を会員に依頼し約1500名の協力を得た。得られたデータの分析・論文作成を行う研究者を会員から募集するという新しい取り組みを行い、会員を筆頭著者とした論文が現時点で3本公表されている。

次に、東南・東アジアの看護学の研究者のネットワークであるSoutheast and East Asian Nursing Education and Research Network に参加している10カ国の研究者による国際共同研究である。10カ国の看護学部等の学生・教員がCOVID-19による教育への影響を感じつつも、新しい学習形態に概ね満足していたことなどを示すことができた。この研究は対面のミーティングを一切行わずに実施した国際共同研究であり、初めての経験から学ぶことが多かった。

最後に、高齢者施設のスタッフを支援するための情報発信活動も、東京大学・千葉大学・大阪大学の老年看護学を専門とする共同研究者とともに行った。コロナ禍初期の2020年4月ごろに国内外の政府機関や研究機関が公表していた高齢者施設でのコロナ対策についての文書を収集・翻訳・ウェブサイトにて公開し、高齢者施設のスタッフからの相談窓口も開設した。共同研究者たちとはこれまでも多くの活動をともにしてきたが、迅速に支援を行いたいという動機があったこの取り組みにおけるスピード感は、これまでに経験のないものであった。

3つの活動を振り返り、①既存のネットワークの活用、②新しいチャレンジ、という共通点があることに気がついた。これからも、研究・教育において(日常生活においても?)人とのつながりを大切にしつつ、できる範囲で新たな挑戦を続けていきたい。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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