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【Researcher's Eye】
ICTと新たな地球市民教育

2019/04/23

  • 前川マルコス貞夫

    慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科専任講師 専門分野/グローバル教育、ビジュアルコミュニケーション

2019年2月19日、富士見丘高等学校にて第4回SGH(スーパーグローバルハイスクール)研究発表会が開催され、私は初めて審査員として出席した。女子高校生による発表内容は全て英語で行われ、国内外のフィールドワークの経験に基づき、問題点を設定し、幅広い視野で考えられたクリエイティブな解決法が提案された。その表現力は非常に豊かで、またほとんどの発表者は「グローバルワークショップ(GW)」というプログラム受講の経験者であったことに気づき、その成果を強く実感できた。

富士見丘高校は2015年に文部科学省にスーパーグローバルハイスクールに指定されて以来、「サステイナビリティから創造するグローバル社会」をテーマにする教育プログラムの開発に務めている。その中で、メディアデザイン研究科グローバルエデュケーションプロジェクト(G-Edu)が共同研究としてGWのデザインから実践までを行ってきている。

当プログラムは1年生、約100名の生徒を対象とした必修科目として設計され、年間8回の参加型セッションを実施している。ICTの力を借りて、国や文化を超えた「グローバル社会」について学び合える環境の創出を通じて、個々人の「グローバルシチズンシップ(地球社会の一員としての意識)」を育むことも目標としている。

全セッションは3つの要素で設計されている。まず、地球規模問題について理解を深めるための「global awareness」。そして、対話を通じたコミュニケーション、グループワーク、創造力や表現力などの「21世紀型スキルの修得(global skills)」。最後に、オンライン検索、映像制作など、自らアクションを起こせるための「メディアリテラシーの修得(global action)」。国内外の高校でも同じプログラムが実施され、最終回はインターネットで接続し、発表し合うこともある。

G-Edu は幼稚園児からの幅広い年代を対象に地球規模問題を「教育」で解決するため、「新しい学び」のデザインを研究している。グローバル化が進む中、世界人口の半分以上がインターネットを利用している今こそ、ICTを活用した地球市民教育が不可欠である。グローバルを考え、グローバルに学び合う、新たな地球市民教育の創出に貢献していきたい。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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