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【Researcher's Eye】
大津敬介:比較優位と人の縁

2019/02/12

  • 大津 敬介(おおつ けいすけ)

    慶應義塾大学商学部准教授 専門分野/定量マクロ経済分析

私はアメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で経済学PhDを取得し、日本銀行金融研究所に2年勤めた後、上智大学国際教養学部で2年、イギリスのケント大学で7年間教鞭をとり、2017年より慶應義塾大学商学部で現職に就きました。期せずしていろいろと職場を移ったおかげで様々な研究者と触れ合う機会に恵まれました。

大学教員の重要な業務として研究活動があります。これは、日進月歩の学術研究を高等教育に反映するために欠かせない業務です。私の研究分野は「定量マクロ経済分析」といって、現実経済を必要最小限に単純化した経済モデルを用いて、経済成長や景気循環といったマクロ経済事象の要因分析や政策効果の推計を行います。

現在私が特に力を入れている研究は、高齢化の経済に対する影響の分析です。世界に類を見ない速さで超高齢社会になった日本で、高齢化が労働力減少・社会保障負担増大などを通じて経済成長に与える弊害を様々な経済政策がどのくらい緩和するかを明らかにすることは極めて重要な課題です。

これらの研究成果は学術論文という形で公表されますが、どのような学術雑誌に掲載できるかで、その論文自体のインパクトや研究者の評価が分かれてきます。経済学者は、自らが見出した知見によって現実経済が改善されることを願います。そのため、より多くの人の目に触れられる権威ある雑誌に論文が採択されるために日々努力をします。

定量マクロ経済分析の論文は、マクロ経済データに基づく経済動向分析・マクロ経済理論モデルの構築・モデルを用いた定量分析という構成になることが一般的です。そのため、複数の共同研究者がデータ分析・経済理論・プログラミングなど、それぞれ比較的に得意な分野に特化して作業を分担することで、効率的に質の高い研究成果を生み出すことができます。これは経済学で「比較優位」と呼ばれる概念です。

私自身もUCLA時代の恩師や元クラスメート、日本銀行時代の元上司・同僚、上智大学時代に知り合った友人、ケント大学時代の元同僚といった優れた研究者と共同研究を行っています。今後も重要な研究課題を解決していくために、人とのつながりを大切にするとともに、新しい出会いに恵まれることを楽しみにしています。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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