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【Researcher's Eye】
永田直也:オリンピック・パラリンピックに向けて

2018/12/19

  • 永田 直也(ながた なおや)

    慶應義塾大学体育研究所専任講師 専門分野/スポーツ心理学

2020年に東京でオリンピック・パラリンピックが開催されることが決まり、スポーツ界は賑やかになっています。慶應義塾大学においても、英国チームが日吉キャンパスにおいて事前キャンプをすることが決まりました。その準備の一環として私が所属する体育研究所では、「KEIO2020project」と題した学生主体の活動を行い、日吉を訪れる選手の受け入れに向けた準備をしています。

大会で選手が最大限の能力を発揮するためには、綿密な準備が必要なことは自明のことです。この準備では、選手の身体面だけでなく心理面も強化・調整する必要があります。これに関してスポーツ心理学では、選手の心理面の強化・調整に関する研究が行われています。

この研究は、 1964年の東京オリンピックに向けても、「あがり」の研究として実施されていました。前回の東京大会からつながる研究の成果をもとに、私もスポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング指導士、日本パラリンピック委員会医・科学・情報サポート(心理領域)のスタッフとしてオリンピック・パラリンピックへの出場を目指す選手のサポートを行っています。

本番が近づくと選手は、練習での強化に加え、本番を想定した準備をしていきます。2020年は、これまでのような海外での大会に関わる準備は少なくなります。移動距離が短いため時差ボケはありません。日本のテレビを見ることができますし、日本語の声援を聞くこともできます。

一方で、心配な点もあります。日本語が溢れているということは、不要な情報が入る可能性もあります。それは、選手の不安を増大させるような情報かもしれません。また、声援が理解できることは、選手にとっては重圧になる可能性もあります。利点ばかりではありませんが、選手はどのような状況でも、競技で最大限の力を発揮することができるようにならなければなりません。

オリンピック・パラリンピック開幕まであと一年半程となりました。選手が様々な状況を乗り越え、力にすることができるよう、選手とともに良い準備をしていきたいと思います。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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