【その他】
【KEIO Report】私立学校法の改正と慶應義塾規約の歴史
2025/08/29
新しい「塾長」の誕生
その後、種々の改正を経て、塾長が理事長でありかつ学長でもあるとの定めは、戦後、1950年の現行規約で初めて明文化された。この時の規約の改正は、教育基本法や学校教育法、そして私学法の施行をうけて、私立学校経営の民主化を旨とし、(民法上の財団法人の位置づけから)学校法人への組織替えを図るものであった。尤も、当時義塾にあってこの改正作業に携わった委員、板倉卓造評議員会議長は、「私立学校法に則り最小限度の改正を行ったもので、非常に穏健なものである」と述べ、私学法に沿った組織の改変は余儀なくされたものの、義塾にあっては、もとより民主的で平らかな学校運営は、戦前も戦後もなく続いてきたことを示した。
慶應義塾規約の改正
2025年4月1日、私学法の改正とともに慶應義塾規約の改正も成った。評議員会はこれまで通り「最高議決機関」として運営される。改正私学法は、理事会を「意思決定機関」、評議員会を「諮問機関」とする従来の私学法の基本枠組みを踏襲し、それに付随する規定を細かく定めたが、我々は文科省との何度にも及ぶ確認から、理事会を執行機関、評議員会を決議機関とする従来の義塾の運営を堅持することができた(ただし、理事と評議員の兼職は不可となった)。むろん、 理事長と学長を兼ね一切の塾務を総理するという塾長の職務権限に変更はなかった。ここに、評議員会と塾長とが両輪と なって、これまで通りそしてこれからも、義塾の運営を駆動し続ける仕組みが維持された。かくして条文数では1950年の規約のほぼ2倍に膨れ上がったものの、義塾の制度的骨格にはいっさい手をつけぬままに、規約の「新装化」を図ることができたのである。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
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