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【パリ2024オリンピック・ パラリンピックでの塾生・ 塾員の活躍】メダリスト インタビュー

2024/12/11

女子高から慶應へ

慶應のフェンシング部関係の方々のみならず、社中のいろいろな方から、皆におめでとうと言ってもらい、とても嬉しかったです。今でもフェンシングにかかわっている同期や関係者の方も多いので、オリンピックというフェンシング界にとって一番大きな大会でメダルを見せることができてよかったと思っています。

慶應でフェンシングをやるようになるきっかけは、中学2年生の頃、慶應のフェンシング部の方に「慶應に来ないか」と言われたことです。中高一貫校に通っていたので、大学受験のためにフェンシングを中断するか、あるいはスポーツ推薦で行くかという選択肢しかないかと思っていたところ、慶應に女子高から入れば、大学受験も必要ないし、学部も選べると言われ、高校受験のタイミングで慶應に入ろうと思いました。

女子高ではフェンシングは外で活動していましたが、「本当に女子高は青春だったね」と今でも友達と会って言い合うくらい楽しかった場所でした。自分の中でフェンシングと関係のない場所があることはとても仕合せなことだったと思っています。女子高は本当に自由で開かれていて、多彩な活躍をしている同級生もたくさんいましたので、そういう人たちに囲まれ、行事も勉強も青春を楽しんだ、と思います。

私の人生はフェンシングが占めることが子どもの頃から多く、家族も熱心だったので、プレッシャーや周りの期待にさらされることが多かったと思います。女子高で、試合に勝っても負けても関係ないような友達に囲まれ、1人の女子高生として学校生活を楽しめる場所があったことは大きなことでした。

特に演劇祭は本当に長い時間をかけてすべてを生徒が作り、物語を完成させる、女子高生の熱い思いをぶつける行事で、クラス一丸となってそれに打ち込む体験が素晴らしかったです。フェンシングは基本的には個人種目で、それまでは皆で1つのことをするという経験があまりなかったのですが、人生で初めて組織の一員としての達成感に触れたような気がしました。

慶應でフェンシングをする意義

その後、大学では体育会フェンシング部に所属し、人生ではじめて部活動をやることになりました。慶應は女子はそれほど強くはありませんでしたが、チームの一員として役割を果たしていくのは楽しかったです。在籍中、はじめて2部から1部に昇格し、フルーレ以外の種目を団体でかけ持つなどしたことも部活に入ったんだなと実感しました。

部活動と日本代表との両立は難しさもありましたが、一方で得るものも多かったです。例えば部ではフルーレの種目では1人でたくさんの点を稼ぐことが必要で、それはよい経験になりました。またエペ、サーブルと他の種目を経験するのも競技の幅を広げるという意味では決して無駄なことではありませんでした。

慶應フェンシング部は歴史も古く、受け継いできた伝統とともに、今は新しい道場もあり、フェンシングを厳しくかつ楽しくやる雰囲気があるのかなと思います。今までは塾高から入る流れが大きかったと思いますが、今は湘南藤沢・中高等部も強くなってきたので、一貫教育校が複数ある中、大学の部員が多様化しているのはよいことだと思っています。

慶應のよいところはアスリートだからといって何ら特別扱いされることがないところです。私は経済学部でしたが、本当に1人の学生として勉学に励むことができました。海外遠征などで大変な部分もありましたが、その中でしっかり勉学を修めることができたのは幸運なことだったと思いますし、文武両道を実践させてくれる大学だったと思います。

慶應でフェンシングをすることの意義は2つあると思っています。1つは今言った文武両道を実践できるというところです。もう1つはタテヨコのつながりが本当に強いということ。フェンシング部だけではなく、義塾社中という、お互いに応援をし合う大きなかたまりの中に各々がいること、そこが慶應でスポーツをする意義かなと思います。

これから慶應に入ってくる塾生にはやはり何か1つ、自由な時間の中で、打ち込むものがあることが大事だと伝えたいです。そのうちの1つとして体育会は結束の強い場所で、大学生活をすごい熱量で過ごす仲間が多くいるので、その仲間が後の人生でずっとかけがえのない存在になると思います。

現在、日本代表チームは世界ランキングが3位まであがりました。そのランキングをキープしていきたいです。このままの順位であればもちろんオリンピックも出られますし、決勝に進むという意味でも重要になります。私自身もコンディションを整えて、よりよい色のメダルを取れるように頑張りたいと思います。

(聞き書きにて構成。聞き手=慶應義塾常任理事[体育会担当]山内慶太君)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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