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【パリ2024オリンピック・ パラリンピックでの塾生・ 塾員の活躍】メダリスト インタビュー
2024/12/11

パリまでの道
子どもの頃からフェンシングをやってきましたが、オリンピックを意識するようになったのは、慶應の女子高2年生の時に太田雄貴(おおたゆうき)さん(元日本フェンシング協会会長、2008年北京、2012年ロンドンオリンピック銀メダリスト)の話を伺ったことがきっかけです。ちょうどリオオリンピック(2016年)が近づいていましたので、それを目標にしようと思いました。
女子高1年の時に世界ジュニアで3位になることができ、また代表チームも2012年のロンドン大会後、上の世代がごっそり抜けてしまったので、オリンピック出場は手が届きそうかなと思っていました。
しかし、結果的にはリオも東京(2021年)も代表にはなれませんでした。リオの時はまだ、自分の考えが甘かったかな、くらいに思いましたが、東京大会は人生で一度しかない自国開催、しかも2度目の挑戦で逃したので、このままオリンピック選手には一生なれないのではないかと思い、正直、引退も頭をよぎりました。
でも次のパリオリンピックも年齢的には十分可能でしたし、代表チームもメダルを目指せるような、いいチームになりそうだったので、ここでやめるのは心残りになると思ってパリまで続けようと思いました。
実は東京オリンピックの時に自分が一番成長したのかもしれないと思っています。東京大会前はコロナ禍でとても困難な状況にあり、出場するメンバーも国外での試合ができず、海外選手と対戦できない状況でした。そうすると、日本で練習相手となる私たちが強くないと練習にならないわけです。
ですので、「オリンピックに出られなかったからもういいや」ではなく、出場選手の練習相手としての責任を感じました。メダルを目指せるチームだったので、彼ら、彼女らに頑張ってほしいという気持ちで真剣に打ち込みました。それが結果的に次のパリへの3年間のよいスタートになったと思います。
パリに向けての3年間は、2021、2年あたりから世界選手権の代表に選ばれるようになり、特に団体戦では2023年の世界選手権で、自分のフェンシングができて、はじめて銅メダルを取れたことが自信になりました。
個人戦より、やはり団体戦のほうがパリはメダルの可能性が高いかなと思っていました。団体において自分が3番手、先鋒として次の選手にバトンをつなげば、他にいい選手が揃っていたので、ブレーキを掛けないことを心がけながら戦っていこうと思っていました。
パリ大会にて
そしてパリへの出場が決まりましたが、「出るだけで終えたくない」というのが一番の気持ちでした。メダルを狙えるチームだと思っていましたし、ここを逃してしまうと、次の4年後に代表になれるかどうかもわからないので、メダルを摑みにいこうと思っていました。
フルーレ団体は、まず準々決勝でポーランドと当たりました。自分で一番よかったのはポーランド戦の最初の試合だと思っています。チームとしては3試合目で、早目に逆転したいところでした。ポーランドには最初はリードされると思っていたので、早く逆転して、ポイントを取れるだけ取って次に渡すのが団体戦ではすごく大事なことです。9-5で勝つことができましたが、自分の役目をしっかり果たして次の人にバトンを渡すことができたと思います。結果的にポーランドには、45-30で勝利することができ、次のイタリア戦では敗れましたが、3位決定戦に進むことができました。
カナダとの3位決定戦は試合前から私は1試合だけ出て後は他の選手に託すことは決まっていたので、とにかく1試合を同点でもよいからしのいで、次に渡そうと思っていました。近年は画像分析も発達していてその国の傾向、クセを摑んでいますが、カナダはカウンタータイプで、いつもロースコアになります。リードされるとやりにくくなるので、とにかく1点ずつ差を広げ、無理をして失点せずに慎重につなげようと思いました。結果は2-2の引き分けでしたが、次につなげることができてよかったと思います。
その後は、皆が力を発揮すれば必ず勝てると信じ、結果、33-32のわずか1点差で銅メダルを手にすることができました。3位決定戦は会場である「グラン・パレ」の中央で試合をしましたが、すごく天井が高く、こういうところで試合をするのは初めての経験でした。
銅メダルを受け取ってすぐに思ったのは、そう簡単に団体戦の金メダルは取れるものではないなということです。次のロス大会に向けて金メダルという目標ができたと思いました。今、少し時間がたって思うのは、ロスで金メダルという目標は長い時間の中で、地道な練習努力をしなければ辿りつけないということです。大きな目標を持っていると私は思っています。
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宮脇 花綸(みやわき かりん)