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【鶴岡タウンキャンパス開設20年】福澤スピリットで結実した学問による地方創生

2021/04/07

慶應義塾の東北の拠点は美しい

鶴岡市は山形県の海側の庄内平野にあり、日本海と出羽三山と鳥海山に囲まれ、夏は緑、秋は紅葉、冬は白雪と1年を通して風景が変わる美しい自然を持っている。

鶴岡市の食文化レベルは高く、ユネスコの「世界食文化創造都市」に日本で唯一認定されている。また日本屈指の酒どころでもある。明治5年創業の加藤嘉八郎酒造と先端生命科学研究所がコラボして生まれた純米大吟醸「智徳」は、伝統的手法の「槽掛け・雫どり」で醪(もろみ)を酒袋に入れて滴り落ちた雫だけを集めた貴重なお酒から、最先端の成分分析技術を用いて選別した最高級品で、2020年から慶應義塾公式グッズとして一般販売されている。

「脱優等生」が創る地方の未来

鶴岡キャンパスで私が20年間掲げてきたのは「脱優等生」「普通は0点」というスローガンである。「普通のことは他の人に任せて、我々にしかできないことをやろう」。人と違うことをやると、前例がないので失敗する確率は高い。だから皆やりたがらないのである。でも誰かが人と違うことにチャレンジしなければ、社会も組織も進化しないではないか。誰もやったことのないことに挑戦することは、とてもエキサイティングであり、そのワクワクする雰囲気が有能でクリエイティブな人材を更に呼び込むことになる。

時流や権威に迎合して点数を稼ぐ「優等生」ではなく、批判や失敗を恐れず勇気をもって実行する「先導者」となれ。鶴岡という地方都市から世界に光り輝く研究と人材と産業を多く輩出して、学問による地方創生の成功例を目指すとともに、日本の教育と地方のあり方をもっとエキサイティングで面白いものに変えていきたい。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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