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【Keio Report】留学生向け就職支援の試み

2019/07/12

慶應義塾に学ぶ留学生の動向

義塾に学ぶ留学生の数は、2019年5月1日現在の集計で昨年比195名増の2103名であった。そのうち、学部正規生781名と大学院正規生748名で合わせて留学生数全体の七割を超える。5年前の2014年に比べると、留学生総数で800名の増加、そのうち学部生は310名、大学院生は166名である。これら正規学生の増加の理由は、英語だけで学べるプログラムの充実に負うところが大きいと考えられる。なかでも、経済学部に開設されたPEARLと湘南藤沢キャンパスのGIGAプログラムの充実は、学部正規生として学ぶ留学生数の増加に寄与している。

さらにさかのぼって2000年の統計を見ると、留学生総数は484名、そのうち学部正規生は83名で総数の二割にも届かなかった。一方、大学院正規生は253名で留学生の過半数を占めていた。残りの148名は別科・日本語研修課程で日本語を学ぶ留学生であり、この中に交換留学生を含んでいた。2019年の留学生の内訳はこのころと比べると大きく様変わりをしたわけで、学部正規生の人数が大学院正規生の人数を7年ぶりに上回っている。PEARLが完成年度を迎えた後の2020年5月には学部留学生数がさらに増加している見込みだ。

留学生の生活支援

かつて留学生の生活支援においては、奨学金と宿舎の手配が二大重要課題であった。前者については、文部科学省による国費外国人留学生の優先配置を行う特別プログラムへの申請などの努力と共に、義塾の奨学金制度も徐々に充実しつつある。また、宿舎に関しては2019年現在で義塾が所有するものが2棟、借り上げ宿舎が8棟あり、合計で留学生の収容可能人数は662名。少なくとも交換留学生への提供には余裕がある。しかし、正規学生の増加と共に、進路指導(就職支援)が新たに課題に加わったと言える。

留学生たちの卒修了後の進路は実に様々で、母国へ帰国したり第三国へ留学したりする理由で日本を離れる者が相当数見受けられる。日本に留まる者のうち就職を希望する割合について正確な統計はなく、日本人の卒業生と比べると、元留学生の消息は不明になりやすい。三田会を代表とする塾員の活動は現役学生の就職支援にも資する面があるが、元留学生のネットワークはそれに比べれば未熟である。留学生の就職支援に大学としてどの程度の労力を割くか、そもそもそのような支援を組織的に行うべきか、本格的な議論はまだ始まったばかりと言える。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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