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【Keio Report】留学生向け就職支援の試み

2019/07/12

  • 小尾 晋之介(おび しんのすけ)

    慶應義塾大学国際センター所長・理工学部教授

  • 森澤 珠里(もりざわ じゅり)

    慶應義塾塾長室課長

はじめに

本稿では、義塾に学ぶ留学生のなかで、卒業・修了後に日本国内の企業への就職を希望する学生に対して試行した就職支援懇談会について報告する。懇談会の実際の様子については森澤(執筆当時 湘南藤沢キャンパス学事 国際・学生支援担当課長)から、また、周辺事情について小尾から補足的に説明を加える。

東京三田倶楽部主催の就職支援懇談会

さる4月20日に、英語を主な運用言語として運営している経済学部のPEARLプログラムおよび総合政策学部・環境情報学部のGIGAプログラムで学ぶ留学生を主な対象に、塾員による会員制倶楽部、東京三田倶楽部主催による初めての留学生を対象とした就職支援懇談会が実現した。両プログラムで学ぶ学生にニーズや希望を訊く事前アンケートを実施したところ、回答者の80%以上が就職イベント参加に興味を示し、69名が出席を希望した。この結果を参考に、主催者と大学側が検討を重ね、ある程度の日本語能力を有する留学生を主な対象とした、就職支援イベントを開催した。

プログラムは、「日本における就職」「金融、商社、ITに関する業界説明」に関する卒業生による話を前半に、後半は業界別にテーブルが設けられ、それぞれのテーブルで個別の説明、相談を受けるものとなった。塾員による熱心な説明と後半の個別相談は、日本企業で活躍する塾員から直接話を聞くまたとない機会に、いずれも時間が足りずに予定の2時間を大きく延長することとなった。

参加者34名への事後アンケートによると、回答者の83%が満足、前半の話に83%が満足、69%が後半の個別相談会に満足との回答であった。肯定的なコメントとしては、「親身にアドバイスをもらえた」「人事の視点、または業界の人達が留学生をどう見ているかわかった」「日本での就職活動のモチベーションがあがった」などがあった。改善の希望としては、「より具体的な内容の説明を望む」「各業界で入社後3年でどのような仕事をするのか知りたかった」「海外で働く機会を提供している企業があるか知りたい」「自由に質問できる時間を長くしてもらいたかった」など、日本における就職についてより具体的なイメージを持てるような情報を求めている様子がうかがえた。

“Thank you so much to make this meeting happen. It was a great one ! ”とのコメントに代表されるように、改善の余地はあるもののこの企画の意義や重要性を留学生は十分受け止め、感謝していたことがうかがえた。

日本での就職活動において留学生を取り巻く環境は日本人学生とは異なるため、より細やかな情報提供や支援などが必要である。この度は東京三田倶楽部の多大なご尽力によりこの企画が実現した。世界の多くの大学から慶應義塾を選んで海外から留学してきた学生達が最善の進路選択をできるように、大学としても更なる支援の充実が望まれる。

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