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【義塾を訪れた外国人】
チャールズ英国王(チャールズ3世):義塾を訪れた外国人

2023/05/02

  • 隅田 英子(すみた ひでこ)

    慶應義塾グローバル本部事務長

VVIP(Very Very Important Person)の来訪

2008年は義塾の創立150年記念の年でその数年前から多数の記念事業が企画され、筆者も事務局の国際担当としていくつかの事業に関わり忙しい1年だった。国際業務担当にとってのハイライトは、交流のある世界各地の大学長や代表者を11月の創立150年記念式典に招待することであったが、その直前に全く予想もしない大きな贈り物が英国政府によって義塾に届けられた。

日頃より在京の駐日大使館とのお付き合いはある。国によって担当官の名称は異なるが大方、文化交流の参事官、科学技術やイノベーション担当の参事官経由の業務がほとんどである。英国との接点は、文化担当参事官が代表を兼務する英国の公的な文化交流機関、ブリティッシュ・カウンシルとの連携が多い。コロナ禍前まで、義塾はブリティッシュ・カウンシルと共催で毎年11月に英国ロンドンで、日本留学フェア(Experience Japan Exhibition)を実施し、日本の大学関係者と一緒に渡英し日本留学、JETプログラムなどによる来日の可能性などのプロモーション活動を10年以上実施してきた。

2008年の初秋のある日、突然英国大使館から面会の依頼が舞い込んだ。用件がよくわからなかったので私と当時、国際連携推進室(OGI)にいた上田千尋さんで塾監局の会議室で面会したところ、政務担当官が通常お付き合いのある部門のスタッフと一緒にやってきた。違和感を持ちながら話しを聞くと、なんと、英国からVVIP(VIPの上を行く意味で、VeryのVを2つ付けた言い方)が来日するという。

上田さんと私はびっくりして顔を見合わせた。いったい、VVIPは誰なんだろう、と素朴に思った。その面会中、担当官から、チャールズ皇太子殿下(当時)のお名前を口頭で直接伝えられることはなかったが、話の内容から面会が終了するころには、来日予定なのは、皇太子殿下であることがわかった。

伝統・最先端の日本、そして、日本の若者との交流をご所望

もちろん事務局でこの来訪依頼を判断できないので、面会後、すぐに当時の義塾の国際担当坂本達哉常任理事に判断を仰いだ。ご自身も英国思想史の専門であり、当時義塾は、英国ケンブリッジ大学のダウニング・コレッジの学寮長(Master)を退任されていた故ピーター・マサイアス教授(オクスフォード大学教授時代には留学中の現天皇陛下の指導教授を務められた歴史学者)にインターナショナルアドバイザーをお願いしており、坂本理事が何度も渡英するなどして親交を深めていた。そのように英国との関係は強固であったので、このVVIPの来訪依頼に対して、坂本理事は、即答で受けましょうと決断された。

警護などの不安はあったが、塾内関連部門や関係省庁との念入りな事前準備を行うことで何とかなるということで、義塾としての正式な意思決定は、同年10月3日の政策懇談会に諮って決定された。その後は、英国政府の「VVIP」のおもてなしをどのように企画するかとなり、塾内関係者や関連部門に加えて英国大使館とも相談が進められた。

大使館からの希望で、日本の先端技術と伝統文化の両面を紹介する企画が必要となった。先端技術の紹介では、同年に新設した大学院メディアデザイン研究科に相談し、日本文化の紹介は文武両道の観点から歌舞伎研究会と体育会剣道部の塾生たちに依頼をすることになった。その依頼を、学生部経由で該当する塾生たちに依頼したのだが、いずれも「喜んでお受けします」という回答があり、ほっとしたことを覚えている。

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