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【写真に見る戦後の義塾】
神輿山上にのぼる

2017/08/01

塾監局前で神輿を迎える鳥居塾長、高橋、薬師寺、湯川常任理事
幻の門と台町の子供神輿
正門に向けて丘をおりる神輿

三田キャンパスの幻の門(現・東門)脇には春日神社がある。三田キャンパスの建物の建築に際しては神事を執りおこない、また義塾の学生の課外活動サークル、竹の会やかるた会などは練習場としてもお世話になっていた神社である。東館竣工前には、幻の門のスロープと隣接している部分もあった。春日神社は、毎年9月初旬の3日間例大祭を行っている。その最終日、町内会(現在は11の氏子会があるようだ)は個々に独自の法被を身に着け、神輿を繰り出して、芝、三田等を練り歩く。三田通りでは、東京タワーと神輿を1枚の写真に収めることができる。初秋の祭の撮影スポットとしても知られているようだ。

1998年9月6日(日)、8つの町内会(三田一交会、北四国、台町、豊岡、三田同友会、綱町、慶南町、芝5丁目)の神輿が三田山上に集結した。幻の門のところに2000年4月竣工予定で東研究棟(現・東館)の建設が計画され、暮れには工事が開始されることになっていた年のことだった。義塾が三田に居を構えた頃から変わらない幻の門とそれに続く石畳のスロープも姿を消すことが決まっていた。幻の門の石の門柱自体は移設されるとはいえ、「幻の門ここすぎて叡智の丘にわれら立つ」と堀口大學が歌った由緒ある、心に刻まれた風景がなくなることは、塾員ばかりではなく、三田の町内会にも衝撃を与えたそうだ。

そこで、神輿の山上集結が企画されたことになる。9月6日の朝九時過ぎに鳥居泰彦塾長はじめ常任理事、春日神社、町内会連合の面々が幻の門を背に記念撮影をおこなったのち、次々と神輿がスロープをのぼり、塾監局前庭に子供も含めて約600人が集合した。各神輿が順次塾長の前でかけ声とともにひと練りし、塾長はお神酒を振る舞い「慶應義塾、塾生をこれからも指導してください」と挨拶を述べねぎらった。山上でしばしの時を過ごした後、神輿は図書館新館横のスロープを下り、正門前広場でひと練りして街へと出て行った。この年1度限りのことであったが、街の人々にとっても、慶應義塾にとっても思い出の1日となった。

(広報室嘱託 石黒敦子)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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