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【KEIO Report】体育研究所の新アクション「サーティフィケートコース:ゼミプログラム」について──スポーツをもっと学びたい塾生のためのプログラム
2025/10/17
今年で設立64年を迎える体育研究所には、「知育・徳育・体育」の一翼を担う組織として、体育・スポーツに関する"教育"、"研究"そして"スポーツ振興"の3つの理念があります。これら三理念の循環と「未来を切り拓くための行動力に溢れた塾生を育てる」ことを基本方針に、塾生の心身に「感動」と「興奮」を与え、塾風を涵養することを目標に日々活動しています。本記事では、昨今の体育研究所のアクションを簡単に紹介しつつ、2025年度からスタートした教育に関する新たな取り組み「サーティフィケートコース:ゼミプログラム」についてご紹介します。
体育研究所の新アクション
体育研究所ではこれまでも、例えば、研究面では体育や運動・スポーツ科学という学際的な領域の中で、大学体育や競技スポーツ活動における諸問題の解決、スポーツ文化の発展に貢献できるよう教員が様々な分野で研究を行ってきました。他方、スポーツ振興として、塾生、教職員、地域の方に向けたヨガやピラティスなどの公開講座、バレーボール・バスケットボール・フットサルなどの塾内スポーツ大会、トレーニングルームやプールの開放、そして他機関と連携したスポーツイベントを開催し、すべての方がスポーツを通じて心身ともに豊かな生活を過ごされるよう活動を続けています。
このように本研究所は、様々な競技経験と専門知識を持つ教員が授業や課外活動、体育会のサポート、大学と一貫教育校の体育・スポーツに関わる多様な場面に携わっています。その枠を超え、様々な競技の日本代表チームへの帯同や国際学会での発表などを通じて得られた知見が、教育・研究に活かされ、実践的かつ質の高い取り組みを支えています。
新しいアクションは2つで、1つは国際化です。詳細は他記事に譲りますが昨年1月に韓国の延世大学、本年7月にはオーストラリアのイーディスコーワン大学と国際協定を締結し、今後も海外の大学や研究機関と国際的な協力関係を築いていきたいと考えています。そしてもう1つの新しいアクションが「サーティフィケートコース:ゼミプログラム」です。
ゼミプログラムの概要
これまで、三田・日吉キャンパスで40種目を超える実技授業、合宿形式の集中授業、そして身体・運動・健康に関する講義・演習といった魅力ある授業を展開してきましたが、2025年4月より新たにサーティフィケートコース:ゼミプログラムがスタートしました。このゼミプログラムは、体育科目の講義・演習で学んだ基礎的な知識(基礎科目)をさらに発展的かつ実践的な学びへと接続させること(応用科目)を目的としたプログラムです。将来的には体育・スポーツ関連領域への進路決定における選択肢の拡大や、健康マネジメント研究科など関連大学院への進学の検討に寄与するために設置されました。各学部のゼミとは根本的に構造が異なりますが、修了者にはサーティフィケート(修了証)が授与されます。では、具体的にどのようなゼミがあるのでしょうか。現在は以下の3つのゼミを展開しております。
スポーツサイエンスゼミ:稲見崇孝准教授
競技スポーツにおけるハイパフォーマンスやコンディショニングを計測するためのノウハウやその理論について実践的に学びます。学んだノウハウや理論は、将来的には学部の卒業論文や大学院進学時における研究にも役立てられます。
スポーツマネジメントゼミ:鳥海崇教授
スポーツ組織(体育会やサークル等)を念頭に、組織の目的を確認し、目標を設定し、その達成に向けた組織牽引の方法について議論し、実践していきます。スポーツ組織のマネジメントを通じて広い視野を持った社会の先導者を育成します。
スポーツ価値創造ゼミ:坂井利彰教授
スポーツの力を活用し、サステナブルな世界の実現に向けて、社会貢献などを通して社会課題を解決するリーダーを輩出することを目指します。祝福される先導者として人間的成長を達成するためにはどのような取り組みが必要かを議論し、先進事例や地域への視察を行いながら実践するための取り組みを行います。
ゼミプログラムの概要
ゼミプログラムは体育研究所が設置する体育科目(春学期:ゼミプログラムⅠ、秋学期:ゼミプログラムⅡ)として開講され、年度をまたいでゼミプログラムⅠ、ゼミプログラムⅡを履修することも可能ですが、ゼミプログラムⅡを履修するためにはゼミプログラムⅠを終了している必要があります。各ゼミプログラムの履修を希望する者は、体育科目の講義ならびに演習科目の中から最低1科目の単位取得を終えている方が対象となります。詳細は体育研究所のHPをご確認ください。そして、ゼミプログラムⅠおよびゼミプログラムⅡの単位を取得するとサーティフィケート(修了証)が授与されます。
サーティフィケートコース:ゼミプログラムは、日吉プロジェクト予算などのサポートも受けながら3年間のトライアル期間を経てスタートに至りました。稲見崇孝准教授のスポーツサイエンスゼミの活動の様子を一部ご紹介しますと、特徴的なのは経済学部、法学部、商学部、医学部、総合政策学部といった多くの学部の塾生が参加している点で、3年間で25名が参加しました。春学期に演習形式で学んだことを秋学期に実践し、最後に成果発表会が行われました。
このゼミプログラムの導入は、本研究所の教育体制の強化につながると同時に慶應義塾の体育・スポーツの教育、研究の発展に貢献できると考えられます。複数の講義・演習科目を履修することで体系的な知識を習得する仕組みを構築することが可能となり、将来、大学研究者へ進む人材、スポーツマネージメントやコーチングの道へ進む人材、あるいは各競技団体の運営に関わる人材、そしてスポーツ関連会社に従事する人材の育成にもつながり、体育・スポーツ界でも多くの塾員がリーダーとして活躍することを期待したいと思います。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
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