【その他】
【社中交歓】光
2025/03/28

岡山のシャインマスカット美味しさの秘密
シャインマスカットは広島の農林水産省果樹試験場安芸津支場で生まれた葡萄ですが、元々マスカットオブアレキサンドリアはじめ数種類の葡萄の交配を繰り返してできた葡萄です。そのアレキサンドリア生産地岡山でも1999年からシャインマスカットの試験栽培が始まりました。岡山は今も昔も日照が多く少雨、温暖で葡萄栽培に適した気候です。また真砂土という余剰栄養を含まず、与えた必要な肥料だけで管理ができる土壌にも恵まれ、さらには岡山独自の温室栽培から生まれた木や葉の大きさと根の広がりのバランスを取ることや、美しい房として仕上げる技術は長年生産者が磨きをかけてきたものです。また白桃と同じように袋掛け栽培を行うことで、甘く肉質の良い外皮の薄い食べやすさも追求して来ました。これらの生産技術の応用により岡山の誇るシャインマスカット「晴王」ブランドが誕生しました。
岡山の気候、風土、農家の方々の高い生産技術これらが一体となって宝石のような1粒1粒が生まれています。
光を失った大人たち
-
冨塚 亮平(とみづか りょうへい)
神奈川大学外国語学部准教授・2009文、2015文修、2021文博
『シャイニング』に映画だけで触れた観客の多くは、題名に違和感を覚えたのではないか。原作ではホテルに閉じこめられる一家の息子ダニーらがもつテレパシー「シャイニング」が物語の鍵を握るが、映画は能力者ではない彼の父ジャックがホテルの力に憑かれることで陥る狂気に焦点を絞っているからだ。
力とそれを信じる心を失った大人は、狂気にのみこまれる。この構図を皮肉な形で反復するのが、同映画をめぐるドキュメンタリー『ROOM237』だ。背景に映りこむパウダー缶とネイティヴ・アメリカン支配、引用されるアニメとホロコーストとの関連を読みこむ説得力のなくはない俗説に加え、アポロ11号の月面映像、果てはミノタウロスとの繋がりを作品に幻視してしまう困ったファンたちの高揚した語りに耳を傾けるうち、脳裏にはジャック・ニコルソンのあの表情が浮かんでくる。だが、単に彼らを見下して嗤うこともできない。そう、目を皿のようにして映画を観直し、湧いてこない霊感を待ちながら今机に向かっている私の表情もまた……
光源氏の宮中の住まい
-
栗本 賀世子(くりもと かよこ)
慶應義塾大学文学部准教授
キーワードは「光」ということで、平安朝内裏を扱う私の研究に関連して、『源氏物語』の主人公、光源氏の宮中の住まいについてお話ししたい。
光源氏は時の帝の第2皇子で、母桐壺更衣(きりつぼのこうい)の局であった内裏後宮の桐壺(きりつぼ)という建物で育てられた。彼は、皇族から臣下の身分に下され、成人した後も、この桐壺で暮らすことを許されている。
実は平安朝では、内裏後宮の建物の使用を許される成人男性は、帝、東宮、皇后腹の親王と摂政関白などの権力者に限られていた。例外的に克明親王(かつあきらしんのう)── 醍醐天皇(だいごてんのう)の皇子、母は皇后ではなく格下の更衣だった──が、第1皇子であるのに皇位継承ができなかった代わりに内裏居住を認められていたと思しき例があり、光源氏の場合もこの出来事を素材としているのだろう。光源氏は第1皇子ではなかったが父帝鍾愛(しょうあい)の皇子であり、彼を皇位につけられなかったことを無念に思った帝が、せめてもの償いとして特別待遇を与えたと考えられる。
光を止めて究極的な省エネ
-
田邉 孝純(たなべ たかすみ)
慶應義塾大学理工学部教授
光は1秒で地球を7周半するほど速いですが、アインシュタインは真空中の光速が不変とする「光速度不変の原理」に基づき相対性理論を築きました。そんな高速な光を止めたり閉じ込めたりできるのでしょうか。実は、真空中の光速は一定でも、物質中では屈折率が高いほど遅くなります。また、超高性能な鏡で囲った小さな箱を作れば、光を閉じ込めることが可能です。この研究は物理学だけでなく、私たちの生活を大きく変える可能性も秘めています。例えば、皆さんがお使いのスマートフォンが熱くなるのは、信号として使われる電流が配線を流れる際に熱を生むためです。もし光回路を実現し、信号を光に置き換えられれば、こうしたロスを大幅に抑え、究極の省エネ化が期待できます。
しかし、光は高速ゆえに情報を保持しにくく、DRAMのようなメモリを作るのが難しいのが現状です。ゆえに、光を微小な光回路を使ってうまく閉じ込める技術の確立は、革新的な光信号処理を実現させるために重要です。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
- 1
カテゴリ | |
---|---|
三田評論のコーナー |
小玉 康仁(こだま やすひと)
小玉促成青果株式会社代表取締役社長、岡山ジュニア三田会会員・1978政