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【その他】
【社中交歓】七

2024/10/30

囲碁七大タイトル

  • 山下 功(やました いさお)

    囲碁三田会名誉会長・1961政

囲碁の7大棋戦とは棋聖、名人、本因坊、王座、天元、碁聖、十段であり、特に棋聖と名人は7番勝負、持ち時間8時間の2日掛かりである。それに備えて主催者は最高の環境を整える。対局場所は超一流のホテルだけではなく仁和寺、寂光寺、興福寺、霧島神宮、神田明神などの寺社仏閣のほか知事公館、沼津御用邸、国立博物館と多様である。前に相応しいと推奨された某所が列車の音が僅かに入るという理由で実現しなかった。それくらい全ての条件を備えなければ対局場所として採用されない。タイトルを争う2人が2日間碁盤を挟んで対峙する。これは単に棋力だけの勝負ではなく、人間力が加味されての勝負になるのではないか。超一流棋士に「日本は現在中韓に差を付けられているが2日制の対局なら互角に闘えるのではないか」と質問したらあっさり「変わりません」と否定された。世界では持ち時間3時間のタイトル戦が主流だが2日制の7番勝負こそ囲碁における人と人との究極の闘いと思う。中韓台日棋士の7番勝負タイトルマッチを観てみたいものである。

秋の七草

  • 池田 三枝子(いけだ みえこ)

    実践女子大学国文学科教授・1986文、89文修、92文博

秋の野に咲きたる花を指(および)折りかき数ふれば七種(ななくさ)の花
萩の花尾花葛花瞿麦(をばなくずはななでしこ)の花女(をみなへし)郎花また藤袴朝顔(ふぢばかまあさがほ)の花

上の2首は万葉集に収録された山上憶良の歌です。これが秋の七草の由来であることはよく知られています。この中で問題となるのは「朝顔」です。

朝顔は朝露負ひて咲くといへど夕影にこそ咲き増さりけれ

夕方の薄暮の中の「朝顔」を賞美するこの万葉歌の存在により、現代の朝顔ではない可能性があるとして、昼顔・木槿(むくげ)・桔梗等の諸説があるからです。

昨年放映されたNHKの朝ドラで、植物学者・牧野富太郎をモデルとする主人公と敵対する大学教員とが、この歌を通じて心を交わせるという場面がありました。「朝顔」が何であれ、立場の異なる者が和歌を介して共感する姿は心打たれるものでした。

ちなみに牧野富太郎博士はその著書の中で万葉歌の「朝顔」を桔梗と断定しています。

輝く星の、ななつぼし

  • 川村 佳那子(かわむら かなこ)

    公益財団法人流通経済研究所農業・物流・地域部門研究員、お米ソムリエ・2020総、22政メ修

日本一の米どころ北海道で、2001年に品種採用されたのが「ななつぼし」である。ほどよい甘さに、やわらかい食感が特徴的なお米。粘りが強すぎないため、口の中に入れたときに、ほろほろっと崩れ、お米の粒感を感じられるのが個人的には好きな特徴である。主役よりかは“名脇役”。あっさりとした味わいから、合わせるおかずの食材本来の味をより引き出してくれる。

広大な土地に、豊かな自然に恵まれた北海道。空気が澄んだ夜空で一際輝く7つの星が北斗七星である。「ななつぼし」とはきらきらと輝く美しいお米をイメージし、北斗七星のように輝いてほしいと願いを込めて命名された。炊き上がったときの白くてつやがある見た目からも、その名の由来を連想させる。

数多くの品種開発から、我々の口に届くのはわずかひとにぎり。「ななつぼし」誕生にもストーリーがある。日本人のソウルフードである、お米。世界に誇れる日本の食材として、これから先も世界中の食卓に、日本のお米が届きますように。

熊の尻尾の先に

  • 田村 定義(たむら さだよし)

    慶應義塾女子高等学校教諭

北斗七星は、世界各地で柄杓やスプーンに見立てられ、その周辺の星々は熊に例えられた様です。全天で3番目に大きい星座である大熊座の、熊の背中から尻尾の部分が北斗七星ですが、都心に位置する勤務校では、月明かりのない夜でも柄杓の形をたどり、熊の形を見いだすことは容易ではありません。

しかし、5月に行われる旅行行事で都心を離れた折に観望会を行うと、北斗七星は探すまでもなくはっきりと見ることができました。その弓なりに反った柄のカーブを伸ばしてゆくと、頭上付近に橙色をした牛飼座のアルクトゥルス、さらに曲線を延長してゆくと南の空の中程に白く輝く乙女座のスピカへと続き、春の大曲線が壮大に描けます。

乙女座には銀河が密集した銀河団があり、太陽系が属す天の川銀河は乙女座超銀河団の一員ですから、地球の宇宙番地は「乙女座超銀河団 天の川銀河オリオン腕 太陽系第3惑星」でしょうか。北斗七星を見ながらこんな話をすると、生徒は神話だけでなく宇宙の拡がりにも興味をもってくれるようです。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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