【その他】
【KEIO Report】KAA-Jr.(慶應赤倉アカデミーJr.)──慶應義塾大学医療系3学部と一貫教育校との集い
2024/10/24

医療系3学部の医学部、看護医療学部、薬学部の学生・卒業生と、慶應義塾一貫教育校の中高生が参加して、KAA-Jr.を8月17日に開催した。医学部は、医学科として1917年に設立され、初代学部長・病院長は新千円札の顔である北里柴三郎である。北里は、病院の経営上で最も大切なことは看護婦であり、優秀な看護婦の養成が急務であるとして、1918年に看護婦養成所を設けて、知識だけでなく品性を重んじた看護教育を行った。薬学部は、理財科出身の小島昇が1930年に共立女子薬学専門学校を開設し、2008年に慶應義塾大学薬学部となった。
慶應義塾大学医学部三四会は、1920年に設立された医学部同窓会である。活動の1つに新潟県妙高市にある「赤倉山荘」の運営がある。赤倉山荘は、塾員の小川雄逸氏の寄付を受けて山荘を建てたもので、一時焼失したが1994年に再建された。慶應赤倉アカデミー(KAA)と称する、赤倉山荘を利用しての1泊2日での3学部の学生と先輩教員が共に語り合う会を開催しているが、さらに一貫校を対象とした活動を始めようということで、3学部の学部長と一貫校の各校長の協力を得て、3学部の学生と卒業生が、一貫校の学生との交流の場として始めたのがKAA-Jr.である。
第1回は塾高、志木高、湘南藤沢高、女子高の生徒を対象に、「医療系3学部現役大学生と本音で語ろう」と題して、三四会理事の深川和巳君や当時薬学部学生であった吉田輝々君が中心となって始めた。2020年3月に病院や研究室のラウンドを入れて開催の予定であったが、新型コロナウイルス感染症の発生のため中止にして、動画配信と質問の受付を行った。好評であったこと、「赤倉アカデミー(KAA)」が2020年4月に慶應義塾大学公認学生団体として認められたため、第2回以降は学生主催で三四会が支援して開催してきた。2023年よりニューヨーク学院も加わり、今回は第6回目となり、中学生にも声を掛けた。
今回は、現地参加14名(塾高2名・湘南藤沢中等部3名・湘南藤沢高等部8名・ニューヨーク学院1名)、Web参加17名(ニューヨーク学院)の計31名であった。KAA-Jr.実行委員の福王嘉浩君(医5年)の司会で始まり、私(三四会会長)より挨拶として、KAA-Jr.の紹介、3学部の発祥の経緯や、信濃町では診療・教育だけでなく多くの研究が行われていることを話した。
第1部の大学生パネルディスカッションでは、ファシリテーターを斎藤樹君(薬4年)が務め、大学生パネリストとして福岡理玖君(志木高卒・医2年)、寺澤哲君(塾高卒・医2年)、松野紗紀君(女子高卒・医2年)、長澤佳南君(ニューヨーク学院卒・医2年)、永田みのり君(湘南藤沢高卒・医2年)、關口花央君(女子高卒・看2年)、黒石川玉菜君(湘南藤沢高卒・薬2年)の7名がプレゼンテーションを行った。学部選択の理由、高校時代の勉強法、大学での授業内容や授業の難易度、勉強とクラブ活動やアルバイトの時間配分、大学生活に余裕があるのかなどが話された。また、医学部では約6割の人が海外留学していることや、医系学部を選んだ理由として国家資格が得られることがあげられた。高校時代に何をしておくべきかの質問には、受験が無いので高校の学生生活をエンジョイし、友達を大切にすべきで、高校時代に勉強しておくべきことは英語との意見が多かった。逆にニューヨーク学院卒の学生からは物理や化学の用語を日本語でまとめておくべきとの意見があった。
第2部の社会人パネルディスカッションでは、儀賀理暁君(1993年医卒・呼吸器外科/緩和医療科)がファシリテーターで、パネリストとして安藤崇之君(2013年医卒・総合診療教育センター)、佐々木広視君(2015年医卒・厚労省医系技官)、植松未奈君(2013年看卒・助産師・産科外来)、宗あさひ君(2018年看卒・健康マネジメント研究科後期博士課程)とWeb参加で伊藤誠人君(2018年薬卒・製薬会社)がプレゼンテーションを行った。業務内容と現在に至るまでの経歴、どうして現在の職を選んだのか等が話された。
安藤君は英国に留学して総合医の必要性を感じ、起業して医学教育に関与していること、佐々木君はCOVID-19の感染対策に関わってきて、現在は感染症危機に備える新たな専門家組織「国立健康危機管理研究機構」創設に関与していること、植松君は助産師としてのモチベーションについて、宋君は現在健康マネジメント研究科後期博士課程であることなどの他、看護の言語化、看護での留学、患者との接点の在り方等について話された。伊藤君は薬学部出身で治験に係る仕事を製薬企業で行っており、在宅勤務が多いことを話された。学生からは、仕事の喜びや業務内容についての質問が出された。プレゼンテーション、質問内容は共に素晴らしく、単に医師、看護師、薬剤師というだけではなく、各職種にも幅広い働き方があることを知る貴重な機会となった。
3学部の学生が中心となり、慶應義塾大学の3学部の横のつながりと、卒業生、学生、一貫校の生徒と言う縦の繋がりを持った珍しく、また慶應義塾ならではの貴重な活動であり、今後も継続してくれることを願っている。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
- 1
カテゴリ | |
---|---|
三田評論のコーナー |
武田 純三(たけだ じゅんぞう)