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『慶應義塾高等学校野球部史』発刊──明治から令和に亘る高校野球史
2024/07/30
昨夏、炎天下の甲子園球場に「若き血」が幾度も響き渡った。義塾社中は塾高野球部の「日本一」に沸き、快哉を叫んだ。
慶應義塾高等学校(塾高)は、1947(昭和22)年の学制改革に伴い、翌年開設された新制高校、慶應義塾第一高等学校と第二高等学校が1949年に統合されたものだが、優勝後の新聞各紙では「107年振りの優勝」の見出しが躍った。つまり、野球部を軸にみれば、塾高は慶應義塾普通部および慶應義塾商工学校から発展し誕生したといえる。実際、慶應高校の甲子園出場回数は春10回、夏19回で、両校の春3回、夏11回が合算されている。
だが、その歴史をさらに辿れば、それは1888(明治21)年に結成された三田ベースボール倶楽部に遡る。なぜなら、この野球愛好会は10代半ばの少年たちによって始められたのであるから。草創期が大学体育会野球部の起源とも重なって弁別しにくいのは、歴史の古い学校の在りようが、初めから現在と同じであったわけではないという事情による。
高校野球界の中で最も古く、伝統を誇る本校野球部に、本格的な「部史」がなかったのは何とも残念であったが、今春、ついに『慶應義塾高等学校野球部史』(発行:慶應義塾高等学校野球部・日吉倶楽部、2冊セット函入り)を上梓できた。顧みれば、それは明治・大正・昭和・平成・令和に亘る日本の野球史であり、スポーツ史であり、文化史であり、とりわけ教育制度史でもあった。
「部史」と名乗る以上、記録として正確を期すよう努めた。しかし、同時に、読んで面白いものを心掛けた。例えば、「生の声」を届けるために座談会を数多く収録した。年表も歴史的想像力を刺激するように工夫した。練習試合の結果も出来る限り収録した。だが、最大の特徴は、前史というべき、三田ベースボール倶楽部時代から書き起こし現代に繋げたことである。さらに、部史をより深く読むためにアメリカでのベースボール誕生から戦後までの日本野球史を綴った「野球小史入門」も書き下ろした。部史においても「日本一」を目指し編集委員と共に情熱と探求心を持って取り組んだ。
「部史」の序文で私は「野球とは記録をとり、現在、過去、未来を繋げる『数字と記録のスポーツ』でもある」と記し、だから「野球部にこそ『部史』は相応しい」と結んだ。本書の刊行が持つ意義は、けっして少なくはないと信じている。ぜひ、多くの方にご覧いただきたい。
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七條 義夫(しちじょう よしお)
慶應義塾高等学校教諭・前野球部長、『慶應義塾高等学校野球部史』編集長