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【社中交歓】パズル

2024/03/27

描いて探究するパズル

  • 荒木 義明(あらき よしあき)

    日本テセレーションデザイン協会会長・1996環、98政メ修、2001政メ博

出来上がる絵が毎回異なるジグソーパズルを想像してください。ピースは形と柄がシンプルで、すべて同じです。

弊協会では2014年以降、この「T3パズル」を用いた数学×アートの探究イベントを全国で開催しています。参加する老若男女が作る絵は、自分の名前、季節の食べ物、日常の風景など、さまざまです。それらはどれもあらかじめ用意された答えではなく、参加者自身が創造したアート作品です。

イベントごとに想像を超える新しい作品に出会えることが魅力です。シンプルなピースの組み合わせを工夫することで、多様な作品を生み出せます。しかし、ピースの組み合わせは膨大であり、狙った通りの作品を描くのは簡単ではありません。大切なのは、偶然見つけた並びを観察し、それを身近なものに見立てて、じっくり作品を作り上げることです。

先の見えないこの時代に、自分なりの答えを見つける探究のヒントとしてT3パズルで遊んでみませんか?

数学でキューブ攻略

  • 中筋 麻貴(なかすじ まき)

    上智大学教授、東北大学教授、博士(理学)、数学者・1998理工、2000理工修、03理工博

皆さんはルービックキューブで遊んだことがありますか?

「ルービックキューブ」は、各面が異なる6色で構成された立方体で、各面ごとに3×3の9マスに分割されたパーツでできています。遊び方はシンプル。色がばらばらに配置されたパーツを縦やら横やらに列を回転させることで各面の色が揃ったもとの立方体にもどすだけです。これがとても難しい。そして一度はじめたら思わずハマるほど楽しい。

世の中にはこのパズルの攻略本が山ほどあるのですが、なぜこの手順で動かすと、このパーツが他の配列を崩さずにあそこに移動するのでしょうか? その仕組みを理解しようとすると一気に頭が混乱します。そこで有効なのが「数学」。このパズルの手順や配置を数学的に記述することで、具体的な解法のアルゴリズムを作ることができます。ここで使われる数学は「群論」という理論で、数に限らない対象の性質を演算構造に着目して調べる分野です。キューブ攻略にも、数学が関わっているのです。

パズルと認知症

  • 山田 悠史(やまだ ゆうじ)

    マウントサイナイ医科大学老年医学・緩和医療科アシスタントプロフェッサー・2008医

クロスワードパズルは、認知機能を改善する可能性のある娯楽の1つと考えられることが多いですが、実際のところ、その科学的根拠は確定的なものではありません。そのような可能性の期待の下、複数の研究が行われ、記憶力や他の認知機能の低下が遅いこととの関連が示唆されています。しかし、それらの研究には限界もあり、「パズルをやったから認知機能低下が遅れた」という因果関係を証明することはできていません。

世の中には「認知症に効く脳トレ」というような広告が数多くありますが、それらは科学に忠実でなく、十分な根拠を欠く仮説でしかありません。そして、仮説はよく間違うことに注意が必要で、パズルのみならず特定のアプリやゲームが認知症予防に有効とする因果関係の証明は現時点で存在しません。そのような認識のもと、1つのものを過信せず、定期的な運動、人との関わり、節酒、禁煙、高血圧や糖尿病の治療、目や耳のケアといった幅広い健康習慣を少しずつ心がけることが、認知症予防にも大切です。

Puzzleの語源と得点

  • 籏野 智紀(はたの とものり)

    慶應義塾普通部教諭

日本語話者としては名詞の「パズル」の意がまず思いつくが、英単語puzzle は動詞での使用が先で、puzzle out a mystery やI’m so puzzled. などの表現は今でもよく使われる。手元の語源辞典を繰ると、puzzle の語源は日本語でカタカナ言葉にもなっているポーズ(pose)と関連があるようだが、諸説ありはっきりしない。まさにpuzzling な語である。パズルといえば、普通部英語研究会の活動で、生徒たちとスクラブル(Scrabble)というゲームをする。ボード上に文字タイルを並べ英単語を作り得点を競う、クロスワードパズルのようなものだ。1ゲームで用意されいる文字タイルは100枚。英単語での出現頻度の高いEやAは10枚前後あるが各1点。一方、低頻度のQやZは使用すれば各10点加算される。PUZZLEという語を作ればZが2枚で20点のはずだが、Zはタイルが2枚しかなく、通常は作れないことになる。英語でZが含まれる語は貴重で、その事実には中学生もすぐ気づく。なお、ポーランド語版やチェコ語版のスクラブルはZの枚数が多く、点数が低いそうだ。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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