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【その他】
【社中交歓】レモン

2024/02/27

レモンの皮

  • 矢口 勉(やぐち つとむ)

    株式会社レモンピールプラス代表取締役・1987政

社名の「レモンピールプラス」は、付加価値を加えるという意味です。レモンの皮(レモンピール)を搾ることによって、料理やお酒をよりフレーバーに、また味変をさせることが出来ると考えます。

弊社の業務内容は、アミューズメント施設の設計施工になります。ただ単に箱(建築物の内外装)を設計施工すると同じ施設になってしまうので、何か他施設と差別化したいという気持ちからでした。

私は建築のプロになるため「一級建築士」の免許を取得するのに3年を要しました。学科には合格するのですが、2次試験の実施試験(設計製図の試験で3階立て鉄骨造の課題を5時間半で描ききる)が建築学科卒でない私には毎年完了まで至らずでした。

しかしながら卒業してすぐ証券会社に就職し、顧客になってもらった会社社長に教えてもらった「建築は一生懸命やれば報われるよ」の一言が、当時バブルがはじけて途方に暮れていた私に光明を与えてくれました。今では建築会社の経営に一生懸命になっております。

耕作放棄地をレモン畑へ

  • 都丸 孝之(とまる たかゆき)

    慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科特任教授・2012SDM博

小田原市片浦では古くからみかん生産が盛んに行われているが、農家の高齢化と後継者の減少により50~60haほどのみかん畑が耕作放棄されている状況である。当研究科では神奈川県の県西大学連携事業を通じて、小田原市片浦地域のみかん畑の耕作放棄地を活用し、レモン畑への再生を試みている。レモンを促進する理由として、レモンはみかんに比べ①単位面積あたりの年間収穫量が多い。②剪定などの作業時間が少ない。③キロあたりの販売単価が高い。④鳥獣被害がない。そのため、レモンはみかんに比べ3.7倍の収益性が得られ、農家の収益に貢献できる。さらに我々の実地調査によると耕作放棄地の多くは日照の悪い北側斜面で発生しており、レモンはこの農地でも育成できるというメリットもある。だが、課題もある。我々の消費者へのアンケートによると小田原市片浦のレモンの認知度は都心では低く、約80%もの人が小田原でレモンを生産していることを知らない。今後は、小田原市のレモンの認知を向上させるためのPR活動も行っていきたい。

レモンの植樹の様子
小田原農業まつりでレモンをPR

誰もが欲する〈檸檬〉

  • 小平 麻衣子(おだいら まいこ)

    慶應義塾大学文学部教授

爆弾に見立てた檸檬で、美と知の巨城・丸善を吹っ飛ばす空想にひたる──有名な梶井基次郎の文学作品『檸檬』(1925年)である。京都は寺町通、梶井がレモンを買った八百屋や、カフェ鍵屋、丸善を「聖地巡礼」した読者も多かったようだが、現在ではそれらの店は姿を消したり、形態を変えている。

梶井は肺結核や複雑な焦燥感によって、一般的な価値観に安住することができなくなった。『檸檬』の根強い人気は、誰もが周りとそぐわない自分を見出し、憂鬱を爆破する自分だけの〈檸檬〉を欲していることを示しているのではないか。

このレモンのさわやかさは、一貫して梶井の詩的な言葉によるものである。なにより「檸檬」という漢字は遥かな世界を想像させ、「レモンエロウの絵具をチューブから搾り出して固めたような」という表現では、レモン本体よりも、それから派生した色名による抽象化があざやかである。レモンの旬にちなんで2月号のテーマなのだということだが、檸檬忌は3月24日、梶井の墓は大阪にある。

When life gives you lemons, make battery.

  • 天野 英晴(あまの ひではる)

    慶應義塾大学理工学部教授

レモン電池とは、レモンの果肉に亜鉛と銅の電極を挿して作る果物電池の一種である。レモンの果汁が電解質として働き、ボルタ電池と同様の原理で起電力を発生する。レモン1個で約0.7V程度の起電力を持つが、電池として見ると内部抵抗が極めて大きく、発生電圧も不安定である。

コンピュータの研究にレモン電池がなぜ関係するかというと、我々が研究開発した超低電力コンピュータがいかに低エネルギーで動作するかをアピールするために、デモンストレーションで使おうと考えたのである。レモン1個では動作しないが、6個直列に繋げると動作した。そこで、電極を挿す位置、磨き方、電圧が低下したら重曹を入れると復活するなどレモン電池の作り方のノウハウを磨いた所、数時間にわたり安定して動作することがわかった。

この実験装置を持って世界中をデモして回って大好評だったが、肝心の超低電力コンピュータよりもレモン電池の作り方に質問が集中してしまい、これが誤算であった。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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