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【社中交歓】薔薇

2023/12/22

薔薇の名を冠したチョコレート

  • 柳澤 一嘉(やなぎさわ かずよし)

    チョコグラフィ株式会社代表取締役・1970商

平成元年、代官山でチョコレート専門店「メサージュ・ド・ローズ」オープンしました。

ブランドのコンセプトと発想は欧州での三大ギフト──ワイン、薔薇の花束、チョコレートです。薔薇はデフォルメしても繊細に美しくチョコレートで表現できると考え、弊社の製造技術で表現しました。メサージュ・ド・ローズは「薔薇の伝言」の意味ですので、全て薔薇をモチーフにしたチョコレートギフトに特化しました。

チョコレート原料はヴェイス社製の原料のみを使用することにしました。製造方法が昔からの手作り方式、生産数量も少なく希少価値が高く、素晴らしいアロマと口解けがあるチョコレート原料です。

現在の薔薇の形にたどり着くまでに5年を掛け、何十と試作を繰り返しました。繊細で美しい薔薇に見えるようにするのは困難で、花びらの枚数を現在の数にすることで、表現することに成功しました。

まるで本物の花弁のように咲き誇る当社自慢の一品を、ぜひ食していただけますと幸いです。

薔薇で想いを伝えよう

  • 藤堂 華奈(とうどう かな)

    プリザーブドフラワーデザイナー・1994環

高校時代、留学先のアメリカで男性が女性に日常的に花を贈り愛情表現をする文化に衝撃を受け、日本でもこの習慣を定着させたいという想いから現在の仕事に就いております。

プリザーブドフラワーは生花に保存加工が施され、水なしで長期間色褪せることのないお花。取扱いが楽なため男性やオフィスでも親しまれており、中でも一番人気を誇るのが薔薇です。

薔薇には色だけでなく本数にも意味があるのをご存知でしょうか。例えば「ダズンローズ」。ダズン=1ダース=12本の薔薇のことで、「恋人に贈ると幸せになれる」と言われています。男性が野薔薇を12本摘み取って作った花束を女性に手渡しプロポーズをするという、中世ヨーロッパのロマンチックな風習に由来するのだとか。他にも1本は「一目惚れ」、15本は「ごめんなさい」等さまざまな花言葉が存在し、思わず誰かに贈りたくなってしまいます。

照れくさくて言葉にはできない想いを薔薇に託し、大切な方へ贈ってみてはいかがでしょうか。

https://kanatodo.com//

最高品質の薔薇

  • 北野 雅史(きたの まさひと)

    株式会社青山花茂本店代表取締役社長・2006経

弊社は1904年の創業以来、最高品質の生花を取り扱うことを心がけてきました。代々の店主や社員の努力により1959年より宮内庁御用達の生花店となり、その名に恥じぬよう日々努めています。

今も昔も人気の高い薔薇の品質には特にこだわっています。市場で高い等級として認められる良質な薔薇の条件は、花の大きさや均整、花びらの肉厚さ、発色の良さは当然のこと、茎が太く長く直線的であること、葉にも鮮度があること等が求められます。これら条件を高いレベルで満たす薔薇を安定的に出荷できる生産者さんは一握りで、同品種でも育て方や選別の丁寧さ、輸送時の管理によって、美しさや日持ちが大きく異なります。等級の高い薔薇は仕入値も高くなりますが、弊社では常に、名人が生育した最高等級の薔薇を指名買いしています。

仕入れた薔薇は素早く処理を行い冷蔵庫に入れ、毎日の水換えを欠かさず、「花を捨てるか、信用を捨てるか」の店訓のもと、劣化の兆しを見逃さずに選別し、長く楽しめる新鮮な品物だけをお売りしています。

https://www.aoyamahanamohonten.jp/

野薔薇と折薔薇

  • 西尾 宇広(にしお たかひろ)

    慶應義塾大学文学部准教授

シューベルトの歌曲《野薔薇》で知られるドイツの文豪ゲーテの詩は、リート界では不動の人気作品だ(作曲例は実に150以上!)。ところが、荒地に咲く「若く」て「美しい」薔薇に「喜び」を感じた「乱暴な少年」が、花の「悲鳴」も「抵抗」も無視して薔薇を折り取る、というその内容が、歌曲の牧歌的な調子とはどうも合わない。薔薇は古くから〈女性の純潔〉を表す隠喩だったから、自然を蹂躙する人間の姿を通して暗示されているのは、露骨な男女関係だろう。少年の身勝手な暴力を朗らかに歌う音楽的感性は、自分の願望を無邪気に成就する少年(男性)の視点と表裏のものと思えてしまう。

「薔薇を折る」といえば、すぐに連想されるゲーテ以前の別の文学作品もある。森鴎外が『折薔薇』と訳した悲劇『エミーリア・ガロッティ』だ。ここにも女性を薔薇に譬える有名なくだりがあるのだが、作者のレッシングはそこに潜む男性中心的な道徳観への批判も忘れなかった。歌曲の「野薔薇」とともに、この機にもう1つの「折薔薇」もぜひ。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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