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【その他】
【社中交歓】すずらん

2023/05/24

すずらん会館

  • 原田 敬之(はらだ たかし)

    原田皮膚科クリニック院長・1968医

私は慶應義塾大学皮膚科など38年間大学病院での勤務生活をした後、65歳で定年退職しました。退職後どうしようかと色々迷いましたが、まだ体力的にも精神的にも余力が残っている思いもあり、今で言う“働き方改革”を先取りして、同門の妻と開業しました。小田急線経堂駅の北口に広がる歴史のあるすずらん通り商店街の組合が所有する「すずらん会館」の一角にクリニックを借りました。まさに地域医療ですが、患者さんは土地柄年配の方が多く受診されます。開業して15年になりますが、なかには三色を配したロゴマークや控えめに飾ってある慶大医局から寄贈された三色旗をあしらった盾を目ざとく見つけて「先生も慶應ですか? 私も塾卒業です」とか「私の孫が今年慶應に入りました」などと声かけされることが少なからずあります。その途端学部は異なるものの、なにか昔の同級生に会ったような感じになります。すずらんの花ことばは「再び幸せが訪れる」「謙虚」「純粋」ですが、定年後の人生を謙虚に楽しく、幸せに過ごすことができております。

「すずらん」についての2つの想い出

  • 小泉 光(こいずみ あきら)

    札幌三田会常任幹事・1970商

私は塾を卒業後、ある会社にお世話になりましたが、最初の勤務地が札幌でした。5月の連休に「梅」「桜」「こぶし」がいっぺんに咲く街です。

同じ時期に少し遅れて「すずらん」の花が咲きました。そんな時、会社の若手が「恵庭の自衛隊駐屯地ですずらん狩りができる」という話をしていました。「数年続いているが、すずらん狩りに行ってその年の転勤者に贈るんだ」とのことで、「良いことだ」と思い参加しました。すずらんの花言葉は「すずらんを受け取った人は再び幸せが訪れる」「新任地でも幸せが訪れますように」と祈りながら贈るのだそうです。

もう1つの思い出は、1999年のNHK朝ドラ60作目の「すずらん」です。苦労が多かった娘の話でしたが出演者が橋爪功さんや倍賞千恵子さん、大好きな俳優でしたので見ていました。ドラマの中の駅「明日萌駅」(恵比島駅)には札幌に住むことになった十数年前訪れました。そこにはロケに使った石炭時代の素朴な駅舎が残っていました。

スズランテープと宇宙人

  • 吉田 麻理子(よしだ まりこ)

    工作アーティスト・2008総

私は工作アーティストとして、保育の現場や家庭で保育者・保護者が子どもたちと一緒に、実験や工作を楽しく気楽に取り組めるようアイデアを提供している。

7年前から保育士向け情報サイト「ほいくる」で連載を持っている。週に1本、あそびのアイデアを紹介するのだが、新しいアイデアを考えるために、自分なりの方法を編み出した。それは「〇〇が何の様相をしていたら、面白いか? 子どもが喜ぶか?」という問いかけをすることである。例えば細く裂いたスズランテープが、静電気の性質によって、子どもの手に吸い付いてくる実験は何の様相をしていたら面白いか。スズランテープがフワフワと動く様子。おばけか宇宙人になっていたら面白いかもしれない。

細く裂いてまとめたスズランテープに、カラーテープで目鼻をつくり、「宇宙人」として天井から吊るしてみたら、当時6歳の息子がとても喜び、宇宙人とたくさん「握手」してくれた。小さな子どもが身近にいる方に、ぜひ試して欲しい考え方である。

ランディシュの輝き

  • 熊野谷 葉子(くまのや ようこ)

    慶應義塾大学法学部教授

ロシアの森に陽光と暖気と命のざわめきが満ちる5月、すずらんの白い花が咲く。と言うと、その昔ダークダックスが「ラーンディシュ、ラーンディシュ」と歌ったロシア歌謡「すずらん」を思い出す方も多かろう。この日本語版は男性目線ですずらん(ランディシュ)を胸に抱く乙女を描いているが、オリガ・ファジェーエワの原詩は女性が自分の彼氏を歌ったもので、1958年にゲレナ・ヴェリカノヴァの美声で流れるや大ヒットした。今も「ロシア人なら知っている100曲」にランクインする、オスカル・フェリツマン作曲の愛唱歌である。

「私」の彼はまだ若く、たぶん貧乏で不器用で、「私」に薔薇や百合ではなく、控えめなすずらんの花束をくれた。「派手じゃなくても、豪華じゃなくても/やさしい香り/素敵な春でいっぱい/詩のない歌のよう/初めての恋のよう/初めての告白のよう」と続き、サビは「すずらん、すずらん/輝く5月がごあいさつ/すずらん、すずらん/白い花束」。すずらんは初夏の、そして2人の若さの象徴なのである。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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