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【KEIO Report】「未来への道」──義塾中等部創立75周年を迎えて

2022/12/21

中等部創立75周年記念式典
  • 井上 逸兵(いのうえ いっぺい)

    慶應義塾中等部長、大学文学部教授

去る11月12日に、大学三田キャンパス西校舎ホールをお借りして、慶應義塾中等部創立75周年記念式典を挙行いたしました。式には、伊藤公平塾長はじめ、山内慶太常任理事、廣田とし子塾監局長、菅沼安嬉子連合三田会会長(中等部ご出身!)、田中元浩中等部同窓会長、一貫校学校長の皆様、元中等部長の皆様、片桐知己治東京私立中高協会第二支部長にご臨席を賜りました。以上の方々を含め58名のご来賓、18名の同窓会の皆様にもお越しいただき、現中等部生三学年の生徒たちを暖かく包み込んでくださるような雰囲気となりました。

式典は、大きく分けて、報告、式辞、ご祝辞を中心とした、フォーマルな前半と、映像や写真あり、トークあり、歌ありの、笑いと感動にあふれた後半という構成です。厳かながらも和やかさも加わり、明るくのびのびした中等部らしいものになったと思います。式典というと行儀よく座っていなければならない、肩の凝るものになりがちですが、終了時は、皆にこやかに楽しんだ様子でした。会場にご参列いただいた皆様にお作りいただいたムードの賜物だと思います。

式典前半では、中等部の歌斉唱、芳賀晋作主事からの「七五年のあゆみ」の報告、部長式辞ののち、伊藤塾長から、ご祝辞として、ご自身の普通部時代の思い出など、いわばライバルとしてご覧になっていた中等部の思い出などを交えて心温まるメッセージを頂戴しました。田中元浩同窓会長は伊藤塾長と同期でいらっしゃって、普通部・中等部のサッカー部の対抗戦(多くの部で行われている、いわゆる普中戦)での思い出などもお話しくださいました。現中等部生の目線にも降りてくださり、ユーモアあふれるお話しは、ガッツリ彼ら、彼女らのハートをつかまれたことと思います。続く田中同窓会長からいただいたご祝辞でも伊藤塾長との普中戦での思い出に触れられ、現中等部生たちも楽しそうにお話しに耳を傾けていました。さらに、阿久澤武史義塾高等学校長から一貫校学校長を代表されてのご祝辞として、『漢書』の「これをひたすこと海のごとし、これを養うこと春のごとし」という、ゆったりと時間をかけて人を育てるとの主旨のことばと中等部の教育のあり方と重ねたメッセージをいただきました(ご事情により山崎俊一中等部参事/元中等部長が代読)。

後半は、まず記念品が紹介されました。その一つの洋菓子は、環境に配慮して作られたものです。中等部が行っている「SDGs宣言」を踏まえての、中等部では自他共に認めるスイーツ男子である小綿清哉教諭がチョイスしたものです。

つづく、Looking Back 1997-2022と称したコーナーでは、51回生から75回生までの各年度25年の写真を皆で眺めながら、51回生で生徒会委員長をされていた島雄輝さんと現生徒会長の3年C組の西隈凛太郎君が、壇上で中等部生今昔を対談形式で語りあいました。若かりし頃の現ベテラン教員の写真を見て生徒たちも大盛りあがりで、たくさんの笑いに包まれた和やかな雰囲気の中、75年のうちのここ25年を振り返ることができました。変わらぬもの、変わったものの両方を通して、中等部の礎が脈々と受け継がれてきたことに生徒たち、同窓会の皆さんがともに思いを深めたことと思います。

続いて、中等部75周年記念歌が披露されました。作詞、作曲ともに生徒から募集し、数十編の応募作品の中から選ばれたものです。3年D組の佐藤駿太君の作詞、3年A組の和田大洋君の作曲の「未来への道」と題する曲が記念歌として選ばれました。生徒たちの力でできあがったすばらしい曲に感動を覚えた人たちも多かったことでしょう。曲をここでご紹介できないのは残念ですが、歌詞の一節をいくつかとりあげてご紹介しましょう。

歌詞は、75年の先輩たちが築いてきた歩みと、未来への道を自ら切り拓いていこうという気持ちのこめられたワードが散りばめられています。「新しい扉 自らの手で開こう」、「輝く未来 自らの手で築こう」という歌い出しの歌詞や「自分で創り出す道」、「自分で歩き出す道」などの歌詞は、「自ら考え、自ら判断し、自ら行動してその結果に責任を持てる自立した個人を育む」という中等部の基本理念をベースに考えてくれたものでしょう。「先輩からの教えを胸に」、「先人からの伝統を胸に」、「光るペンマークに通ずる誇りと気品」などの歌詞は、中等部、および義塾の伝統を、中学生らしいみずみずしい筆致で表現したものと思われます。さらには、「中庭のバレーボールの音(ね)」、「切磋琢磨した校友会」など、中等部生、卒業生が中等部生活を必ず思い起こすフレーズがあります。

編曲や収録は専門家の手をお借りしましたが、できあがった曲が披露され、一同が聞き入り、万雷の拍手が送られました。これまでの記念曲「風が光が」、「みんなの三十年」、「時のかけ橋」とともに、これからも永く中等部生に歌い継がれていくことと思います。曲の披露の後には、作詞の佐藤君、作曲の和田君が壇上に上がり、生徒会委員長の西隈君がインタビューしました。もちろん教員たちの手助けはありましたが、生徒たちの手で作られた曲であることが強く印象づけられ、私も誇らしく思いました。

終了後、生徒以外は、写真撮影の後、三田生協食堂に場所を移して懇親会が行われました。冒頭、本年逝去された大澤輝嘉教諭、吉村洪元教諭に黙禱をささげました。懇親会はノンアルコールのささやかなものでしたが、ここでもありがたく暖かいおことばを頂戴し、同窓会の方々も旧交を温め、よい会になったと思います。山内常任理事から中等部、義塾の歴史を踏まえたご祝辞、菅沼連合三田会会長よりご自身の中等部時代の思い出のつまった乾杯のご挨拶、また、元中等部長を代表して山本英史元部長にも楽しいご挨拶をいただきました。

創立の精神と福澤の精神とをあわせて75周年を振り返り、一方でこれから先何十年をあらためて思い、明るく楽しくも心と姿勢を正すよい時間になりました。関係各所にも御礼を申し上げます。

75周年シンボルマーク

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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