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【KEIO Report】慶應義塾大学病院予防医療センターの森ビル株式会社虎ノ門・麻布台プロジェクトA街区タワーへの拡張・移転について

2022/10/24

虎ノ門・麻布台プロジェクト(中央が、予防医療センターが入居するA街区タワー)ⓒ DBOX for Mori Building Co.
  • 高石 官均(たかいし ひろまさ)

    慶應義塾大学病院予防医療センター長・教授

慶應義塾大学予防医療センターは、2023年秋に森ビル株式会社が手掛ける虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業(虎ノ門・麻布台プロジェクト)内A街区タワー(5階・6階)に拡張・移転いたします。今回の拡張・移転は、2020年に開院100年を迎えた慶應義塾大学病院にとって次の100年に向けての大きなプロジェクトであり、「一人ひとりの人生と共に歩む医療を」をスローガンに、慶應義塾大学病院が一体となって、〝健康寿命の延伸の一翼を担うこと〟、〝高度にパーソナライズされた健康管理プログラムを開発・実践すること〟、〝予防医療の新たな価値を創造すること〟をコンセプトに全力で取り組んでまいります。

予防医療センターは、2012年8月に慶應義塾大学病院三号館南棟3階に開設されました。慶應義塾大学病院基準の確かな診断力と、きめ細やかな受診者対応などを評価頂き、受診者数は年々拡大し、リピート率も8割を超えたために、現在予約が数カ月待ちという状況になっています。また開設10年を迎え、最先端の医療機器への更新とそれを利用した最新の予防医療検査メニューの開発、予防医療研究の推進など、解決すべき課題が出ておりました。

一方、森ビルは、「Green & Wellness」をメインコンセプトとした「虎ノ門・麻布台プロジェクト」において、あらゆる世代の人々が心身ともに生き生きと暮らし続けられる街づくりを目指す中で、その中核となる医療機関を探していました。

両者の思惑が一致し、2021年3月に「予防医療センターの虎ノ門・麻布台プロジェクト」への拡張移転および『ヒルズ未来予防医療・ウェルネス共同研究講座』の開講に関する基本協定が締結されました。

予防医療センターが「虎ノ門・麻布台プロジェクト」に移転することで拡大するフロアを有効に活用することにより、増加する受診者への対応やプライバシーに配慮した検査環境を提供することが可能となります。また、最新の機器および画像処理システムの導入により検査精度を向上させ、疾患の早期発見を目指します。そして、受診者との対話を大切にするNarrative-Based Medicineに基づき、受診者ニーズに応じて最適に個別化された予防医療を展開する予定です。

予防医療研究においては森ビル株式会社と共同研究講座『ヒルズ未来予防医療・ウェルネス共同研究講座』を開設することで、虎ノ門・麻布台プロジェクトで働く人々の多様なライフステージにおける健康課題を把握し、ウェルネス・ウェルビーイングに関する研究成果の社会還元に取り組むことにより、予防医療のさなる学際的な発展が期待されています。

〈最寄り駅〉
東京メトロ 日比谷線 神谷町駅より徒歩7分
東京メトロ 南北線 六本木一丁目駅より徒歩7分

65歳以上の高齢者の割合が「総人口の約3割を占める超高齢社会の只中にいる日本において、「健康寿命の延伸」は大きな社会的課題です。「健康寿命」とは「日常生活に制限のない期間の平均」で、2019年の厚生労働省のデータによれば、日本人では男性が約73歳、女性が約75歳となっています。一方で、日本人の平均寿命は男性が約81歳、女性が約87歳となっており、健康寿命との差(男性が8歳差、女性が12歳差)が、一般的には「医療・介護を必要とする状態」として社会問題とされています。

そして、2020年の日本人の主な死因は、「悪性新生物〈腫瘍〉」、「心疾患(高血圧性を除く)、「老衰」、「脳血管疾患」となっています。健康寿命を延伸するためには、生活習慣病や慢性疾患の予防や早期発見、そして老衰におけるフレイル対策が必須であり、予防医学・予防医療は21世紀の医療における最重要分野の一つであると考えています。

慶應義塾は、約百年前の医学部・大学病院開設当初より、予防医療を慶應医学の原点とし、その必要性を説き、臨床・研究を積み重ねてきました。超高齢社会における「健康寿命の延伸」への期待がいっそう高まる中、慶應義塾は、すべての人々が生涯にわたって健康な生活を送ることのできる豊かな社会を目指して、最先端の治療だけではなく、最先端の予防医療も提供したいと考えています。大学病院で培ってきたノウハウ、最先端の機器・テクノロジーによる検査、エビデンスに基づく精度の高い診断を提供するのはもちろんのこと、医師や医療スタッフと対話を重ねることにより、受診者がご自身のリスクをご理解いただき、自らライフスタイルを改善していただくことを目指します。そして、検査で万が一異常が見つかり、専門的な治療が必要となった場合は、慶應義塾大学病院の専門外来へスピーディに連携しますので、いち早く治療を受けることが可能です。

私たちは予防医療センターを、虎ノ門・麻布台プロジェクトの豊かな緑を望む素晴らしい環境を生かしながら、慶應義塾らしい気品に溢れた部門に発展させたいと考えております。新しくなる慶應義塾大学予防医療センターをどうぞよろしくお願い致します。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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